第174幕
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かちゃんっという音が銀時の耳に届き、うつらうつらしていた意識がはっきりとした。
「海!」
向かいの牢屋へと戻された海は銀時に背を向けて立っていた。
「おい!海!」
『静かにしろ……まだ、早朝だから』
覇気のない声で銀時を制する海はこちらを見ようともしない。それがとてつもない不安を煽った。
「こっち向けよ……」
『なんで』
「なんでも」
『そっち見る必要がどこにあるんだよ』
頑なに拒み続ける海に銀時の方が焦れた。
「不安だから」
『は?』
「お前がまた一人で無理してないか不安だから」
だからこっち向いて。
頼み込むように海にお願いすると、海はこちらへと振り返りかけた。もう少しで顔が見えるというところで海が躊躇い顔を伏せる。
「海」
『……銀、時』
優しく名前を呼びかけこちらを見るのを待った。ゆっくりと上がった顔は憔悴しきってて、銀時を捉えた漆黒の瞳は濡れていた。
縋るように銀時の名を呼ぶ海に胸が強く締め付けられる。近くにいるのに手が届かない。もう大丈夫だと言って抱きしめてやることも出来ない。
一人で牢屋の中で泣き続ける海を銀時は悔しげに歯噛みして見つめることしか出来なかった。
「んん……なんじゃ……もう朝かの?」
「じいさん……起きたのか」
もぞりと動き出したじいさんが不思議そうに銀時を見る。その目はゆっくりと外の方へと向けられ、海のいる牢屋で止まった。
「なんじゃ、あやつ戻ってこれたのか」
『悪い、心配かけた』
「なに気にする事はないぞ。お前さんこそ平気だったのかい?」
『とりあえずはな』
じいさん前にしてへらりと笑い返す姿にもうあの哀愁はない。じいさんも変わらぬ海の姿にホッと胸をなでおろしていた。
「早く……ここから出ねぇと」
自分が早くこんな所を抜け出したいという理由では無い。こんなところに海を置いておくのが許せない。
看守長の悪事を暴いてここを出る。海と共に。
「(待ってろ。必ずお前を外に出してやるから)」
じいさんと笑いながら話している海を見て決意を固め、銀時は一人計画を立てた。
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