第173幕
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「今日の昼頃、囚人三人が瀕死の状態で見つかった。何か知っている者は名乗り出ろ」
看守長に呼び出された銀時たちは牢屋の前に一列に並ばされていた。どうやら囚人たちの間で暴行事件があったらしい。
建物の外で見つかったその三人はいずれも重症で、話すことも出来ないほどだったという。病院に搬送し、彼らの容態が良くなった頃にでも犯人を聞き出すとの事。
その前に自ら出てこいと看守長は銀時たちを並べて一人一人の顔色を伺っていた。
「名乗り出ないつもりか。ふざけやがって。おい、そこの新人。お前じゃないだろうな?」
「は?なんでそうなるワケ?そんな見ず知らずの野郎をぶちのめす程暇してねぇわ」
「お前は昼頃、食堂で騒ぎを起こしていたらしいじゃないか」
「それはこのじいさんがプリン如きでキレただけだろうが」
頭から疑ってかかる看守長に銀時を苛立ちを見せつつも、やっていないと言い切った。それでも銀時を凝視してくる看守長に一言文句を言ってやろうかと口を開いた時、隣にいた奴が突然笑いだした。
『はっ……アイツら重症だったんだ?』
「は?え?」
『囚人にしては骨のないやつだったからな。手加減はしてやったんだけどな』
にこにこしながら語る海に銀時は目を丸くした。この子は一体何を言っているのか。アイツら?手加減?まるで海がそいつらに怪我を負わせたかのような話し方。
まさか、と問いただすために海の腕を掴もうと手を伸ばしたが、銀時よりも先に海は看守長に胸ぐらを掴まれていた。
「貴様か……問題を起こしたのは」
『暇だったからな。少し遊んでやった』
あっけらかんと話す海に銀時はただただ呆然としていた。まさか海が囚人に手を出すとは思っていなかった。そんな事をすればここに居る時間が伸びていくだけじゃないか。
「海……!お前ッ」
『これで少しは気が逸らせるだろ?』
「は……?」
ぼそりと聞こえた声は銀時に向けられていた。看守長に手錠を掛けられて引きずられるように海は懲罰房へと連れていかれる。
「ま、待てよ!海!!」
「やめておけ。庇ったところでお前さんも疑われるじゃろう」
連れていかれる海へと手を伸ばしたが、それはじいさんによって止められる。
何でこんなことをしたのか。気が逸らせるとはどういう事なのか。聞きたいことが沢山あったのに全部聞けぬまま海は行ってしまった。
「あのバカッ」
「あやつ……お前のことを庇ったんじゃないか?」
「は?なんで……」
「昼の件があったじゃろ。鯱との揉め事が。あの時は上手く丸め込んだかもしれんが……」
鯱とのやり取りを見ていた奴が看守長にチクるかもしれない。それを問題として取り上げられ、じいさんの特赦が無くなってしまう要因となる。
それを防ぐために海はわざと他の囚人をボコボコにした、と。
「そんなこと……」
するようなやつでは無い。なんも関係の無い囚人相手に手を出すような馬鹿ではない。でも、実際、海は囚人を三人病院送りにしている。へらりと笑っていた海は至極楽しそうにしていた。
本当に海はそれだけの理由で手を出したのか。
「有り得ねぇ」
「なんじゃと?」
「あいつが俺たち庇うだけの為に暴行するなんて有り得ねぇんだよ。そんな荒くれ野郎じゃない」
自分が知っている海はそんな事をしない。確かに不機嫌になると態度に出るが、誰かを殴りつけるなんてマネはしないはず。
あいつに何かがあった。そのせいで囚人を殴った。そいつらが海にちょっかいを出したのだろう。
「……過剰防衛って言葉知ってんのかアイツは」
身を守るためとはいえやりすぎは良くねぇよ、海。
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