第173幕
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『で?何の用だ?』
食堂を出た後、誰かにつけられているのを感じた海は人気のない所へと向かった。
「おいおい、兄ちゃん。こんなところに来ちまっていいのか?」
『こちらの問いに答えろ』
下卑た笑みを浮かべる男たちに海は淡々と告げる。
「ちょっと遊びたいだけなんだよ俺たちは」
「あんただって暇だろ?こんなところに閉じ込められちまってよ」
「あんた前まで捕まえる側だったんだろ?今は捕まってるみてぇだけどよ」
『だからなんだ?』
別に問題はない、と言い放った海に男たちはゲラゲラと笑いだす。何が楽しいというのか。こちらは鬱憤が溜まっていてイライラしているというのに。
「今までねじ伏せてきた奴がねじ伏せられるなんて見ものじゃねぇか。おい、お前ら……やれ」
声をかけられた二人の男は海へとにじり寄ってくる。
「大人しくしてりゃ痛くねぇよ」
「だからちょっと付き合え」
逃げようとしない海に男たちは怯えているのだと思ったのだろう。威圧していた声色はねっとりと欲の塗れた声へと変わり、海を見る瞳は獲物を見つけたオスのよう。
さながら自分はこいつらの欲のはけ口にされる哀れなヤツ。
『なんてなると思ったか?』
「は……?」
『相手を見た目で判断しない方がいい。黙っているからといって相手が怖がっていると見るのは以ての外だ』
海を捕まえようとしていた男二人は蹴り飛ばされて昏倒。たった一瞬の出来事にリーダーらしき男は口をぽかんと開けたまま固まっていた。
『丁度いい。憂さ晴らしさせてくれよ』
ストレス溜まってるんだわ。
にこやかに笑った海に男は嫌なものを感じてその場から逃げようとしたが、何かに躓いて転んだ。
『逃げるなよ。俺はちゃんと逃げないでやったんだからよ。敵前逃亡なんて男として恥ずかしいだろう?』
「ひっ……!」
『遊びたいんだろう?いいぜ、じっくり楽しませてくれよ』
身体を震わせながら怯える男を冷たい目で見下げながら海は右足を振り上げた。
⋆ ・⋆ ・⋆ ・⋆
『呆気なかったな。囚人なら少しくらい相手になると思ったが……そんなもんか』
看守の目の届かない所までわざわざ来てやったのにものの数分で倒れてしまった男たちに海はつまらなさそうに息を吐いた。
ストレスを発散させるどころか、手加減をするという気を遣ったせいで逆に鬱憤が溜まった。
早くここから出る方法を考えなくては。その為にはあの看守長の悪巧みを表に出さなくてはならない。
外の人間との面会は許可されてはいるのだが、真選組隊士は除外されていた。だから、あの看守長の中での身勝手な行為を告発することが出来ずにいた。
『めんどくせぇ』
銀時のことも早く外に出してやりたいとは思っている。だが、ことが上手くいかない。そのせいでストレスは溜まっていく。考えすぎでズキズキと痛む頭と腹を撫でながら海は己が収監されている牢へと戻った。
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