第172幕
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「看守長殿!毎度届けてもらって申し訳ない」
看守長が持つ手紙へと囚人は駆け寄り、受け取ろうと手を出したのだが、その手が封筒に届くことはなかった。
そのやり取りを間近で見ていた海は目を細めた。
「海」
『わかってる』
「ん、」
小声で銀時に声をかけられて海は湧き上がった怒りを抑えた。
「おっと!檻の外でも中でも人に何かしてもらったら礼を忘れないことだ」
「金なら月初めにもう払ったはずじゃが?」
"金"という単語。看守長の噂は本当の事だったのか、と海は頭を悩ませた。上の人間の目の届かない所でこんな事をしているとは。
『ふざけやがって』
ぼそりと呟いた言葉は看守長の耳に入らず、近くにいた銀時にだけ届いた。
「お疲れさん」
『こんなところで何してんだよ』
視線は看守長と囚人に向けたまま、こっそりと銀時の側へと寄った。
「悪い。まさかこうなるとは俺も思わなかったわ」
『ばか。余計な心配かけさせんな』
「ごめんな」
『……無事ならそれでいい』
銀時の態度が気に食わないと言って懲罰房に入れられて拷問されるよりかはまだマシな状態。
まだ、だが。
『銀時、頼むから変なことはしないでくれよ?』
「わかってる。わかってはいるんだけどよ」
目の前で繰り広げられている看守長と囚人のやり取りに銀時からは怒気を感じられた。
海とて黙って見ていたいわけではない。
『看守長』
「なんですか?」
『今のお話はどういうことですか?』
「これはこれは……お見苦しいところをお見せいたしましたね。この囚人が外にいる息子に手紙を届けてくれと言うので、私が毎回手紙を持っていってるんですよ」
囚人に向けていた悪どい笑みは消え失せ、海には朗らかな笑顔。その変わりようにぞわりと鳥肌がたった。
『ならばその手紙はその人に渡すべきなのでは?』
「ええ……そうなんですけどね」
『何か問題でも?』
「問題なんかねぇだろ」
横から口を挟んだのは銀時。看守長がヒラヒラと手元で弄んでいた手紙を奪い取り、その手で手紙を揺らめかす。
「き、貴様ァ!」
鼻で笑う銀時に看守長は悔しげに顔を歪めた。
「副長補佐殿、このようにコイツは看守の言うことを聞かず勝手な真似をいたします。こんな人間が外に放たれては、また悪事を起こすに違いないでしょう!」
『痛っ……』
「海!」
ガシッと両肩を看守長に掴まれた海は痛みに眉をしかめる。銀時が看守長の腕を掴もうと牢から手を出した瞬間、看守長は地に伏せた。
「……どうすんの?これ」
「な、なんてことしとるんじゃ!!?」
呆れた顔の銀時と驚いて腰を抜かした囚人。
『……やっち……まった』
つい手が出てしまった。倒れて動かない看守長を呆然と見つめた後、海はえへっ!と言いたげな顔で銀時の方を見た。
「うん。可愛いけど、可愛いけど今回はちょっとダメかな」
『これ……俺もそっち側案件になりそうな……予感なんだが』
「いらっしゃい、監獄プレイへ」
『んなことあってたまるかァァァ!!!!』
後日、海は看守長への暴行罪として牢へとぶち込まれた。
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