第172幕
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「恐喝、およびガキをいかがわしい店に連れ込んだ罪状が出ている変態浪人だ。きっちり見張っとけ」
「はっ!米裏看守長!」
「(モ……モノホンの看守だったーッ!)」
コスプレ倶楽部から場所は一転、本物の監獄へと連れてこられた銀時は冷や汗をかきながら檻へと引っ付いた。
自分をここに追いやったあの男はもう既に居ない。誤解だと言おうにもあの男が銀時の罪をでっち上げてしまったせいで牢獄からは出られない。
「ちょ、ちょっと待て!聞いてねぇぞこんなん!あんな不良看守存在していいと思ってんのか!?出せ!俺は無罪だ!悪いのはその変態看守──」
「新入りさんよ」
出せと暴れる銀時に同室の男が声をかける。冷たい木製の床に一畳分の畳。その上に正座して机に向かっている男。
「叫ぶのは点呼の時だけにしてくれんかの?」
「悪いがじいさん、俺は点呼なんて取られる覚えはねぇよ」
「あの悪たれにぶち込まれたんじゃろう?あれに逆らってはここでは生きていけんぞ?米裏 葛之助、この監獄の長じゃ。囚人どもを虐げ搾取し、あらゆる不正を働いておる。ここでは法は役に立たん。ここはヤツの王国なんじゃ」
「じょ、冗談じゃねぇぜ……すぐに俺の手のもんがヤツの不当逮捕を暴き、無実を証明してくれるはずだ。それにそんな身勝手なやり方……あいつが許すはずがねぇ」
仕事に関しては厳しい彼のことなら。きっと身内だったとしても糾弾するはず。いつだったか、長谷川が捕まった時もずさんな証拠の数々を指摘していた。
その結果、岡っ引きたちの意識も強まった。
そんな海が銀時の不当逮捕を見過ごすはずがない。きっと真実を見つけてくれるはず。
そう信じて銀時はその日は眠った。慣れない場所での睡眠は久方ぶりで中々寝付けなかったが、無理矢理目を閉じて寝た。
「(アレがねぇからちょっと寂しいけどな)」
木刀や服と共に押収されてしまった指輪。いつも左手にあったはずのものが今は手元にない。そんな寂しさにキュッと胸が痛んだ。
⋆ ・⋆ ・⋆ ・⋆
「銀さん!やりましたよ!」
そして翌日、子供たちが面会に来ていると見張りの男に連れられて部屋に通された。ガラス越しの新八たちは嬉しそうに笑っている。ほらやっぱり。こいつらならやってくれると信じてた。
「何とか方々駆けずり回って減刑を取り付けてきました!」
「禁錮二年だって!あっという間ネ、よかったアルな!」
「そうか、二年で済んだか……じゃねぇだろ!!!何、朗報ヅラでとんでもねぇ悲報持ってきてんだ!」
「残念ながら既に色んな情報がもみ消されて改竄された後でした」
「問題起こしてたのは銀ちゃんで、それを咎めたあの看守を銀ちゃんが暴行したことになってたアル」
「あんの野郎!罪だけじゃなく、変態性まで俺になすりつけるつもりか!」
あの店で看守長がしてきた事が全て銀時の仕業になっている。そんなことが海の耳に入りでもしたらなんて言われるか。考えただけでも恐ろしく、背筋にヒヤリとしたものを感じた。
「あの看守長、元々手のつけられないワルだったらしくて、警察庁のお偉いさんの父親のコネで今のポストについたらしいです。尻拭いもお手の物なんでしょう。とりあえずヤツの悪事をつついていくしかなさそうですけど……」
「あいつは……」
「海は今日の夕方こっち来るって言ってたネ」
「え、来るの!?」
「海さんも銀さんをここから出そうとしてくれたんですよ。看守長の事を教えてくれたのも海さんです」
「そ、そうか……」
「海さん心配してましたよ」
「悪い」
「それは海さんに言ってあげてください」
「銀ちゃんの為に仕事ほっぽってたアル。マヨラーと喧嘩までして」
そんなことまでしたのか。
銀時の身の潔白を証明する為に海は自分の仕事を放置してまで動いてくれたのか。
「迷惑……かけてんな」
会ったらなんて声をかけたらいいのだろうか。迷惑をかけてごめん?助けようとしてくれてありがとう?
いや、その前に海の顔を見たら泣いてしまいそうだ。
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