第171幕
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『ただいま……?』
未だ慣れぬ挨拶をしつつ中へと入ると、奥の方からゴンゴンと何かをぶつける音が聞こえた。
靴を脱いで上がり、居間の方へと顔を覗かせるとそこには東城がいた。
「あれ?海さん?」
「海!来てたアルカ!」
『なんだか今日も騒がしそうだな』
二人にお帰りなさい、と出迎えられ海ははにかみながらただいまと返した。銀時も海のことに気づいていたが、目の前で荒ぶる東城のせいで声をかけられず、ただ手を軽く上げるだけ。
『今度はどうしたんだ?』
「九兵衛さんの所にいたあの小猿が将軍家から逃げ出したんですよ」
『は?』
「人のペットを横取りした罰アル」
『じゃあ、あのサルは今九兵衛の所にいるのか?』
サルが自分で逃げ出してしまったのであれば海がしてやれることはない。それで九兵衛の元へと帰ってきているというのであれば、それはまた仕方ないこと。あれだけ九兵衛に懐いていたのだから。元の主人の元に戻りたいと思うのは動物も人間も同じではないだろうか。
それはそれで良かったのか、と思ったがどうやら話はそう上手くいかないらしい。
「いえ、逃げ出したまま行方不明みたいなんです」
「それで、九ちゃんたち探し回ってるって。ご飯もちゃんと食べてないらしいヨ」
『九兵衛の所に帰ったんじゃねぇのかよ』
それとも将軍家からサルを連れ戻せと言われて探し回っている間にすれ違ってしまったか。
何はともあれ、ペットであるサルが将軍家の元から逃げ出してしまったのだ。早く連れ戻してこいと言われているはず。
東城の顔を盗みみれば焦りの色。柳生家が将軍家から糾弾されて罪を科されるだろう。
『早くあの小猿見つけねぇと』
「そうなんです!!だから力を貸してください!」
あなたがたウンコ投げられ機の力を!と豪語する東城にピクリと片眉が上がる。それには銀時も頭に来たらしく、東城を厠へと連れ込むと顔面を便器へと押し込んでいた。
『銀時』
「なに?海もコイツ踏む?」
『手段を選んでいられないっていうならそうするしかないだろ。俺たちが囮になってサルが出てくるならそっちの方が早い』
「おま、糞まみれになってもいいって言うのかよ!」
『全部避けるから問題ない』
「それが出来るのは海君だけですー!!」
『お前だって頑張れば避けられるだろ?』
俺の剣筋を見切れるんだから、と付け足せば銀時は渋い顔で「そういうことじゃない!」と叫んだ。
「ちょ、銀さん!海さん!!コレ見てください!」
ちょっとした言い合いが発展しそうになった海達に新八が驚いた顔でテレビを指差す。そこにはサル山からサルたちが逃げ出したという報道。そしてそのサルたちを逃がしたとされるサルの姿が映っていた。
『……このサル』
「ヤツだァー!あのサル……我々の捜索を撹乱する為に市中に大量のサルを放ったんだ……」
「んなアホな」
「畜生の分際でなんと悪知恵の働く……これでは他のサルどもに紛れてヤツの見分けがつかない!やはり、切り札はあなたたちしかいない!」
そう言って東城は海の腕を掴み外へと連れ出す。海はされるがまま外へと連れ出され、的になるようにと立たされた。
「おい!てめぇ、海を的にさせるつもりか!!」
「あのサルの桜樹 海に対する執着を貴方もご存知でしょう!寝込みを襲ってまで顔面を汚したいというあのサルの執着を!!」
「海の顔面を汚していいのは俺だけだわ!!」
『もうなんでもいいから早くあのサル探すぞ!!』
表で言い合う銀時と東城に半分キレた。大体、顔面を汚してもいいのは銀時だけってどういう意味だよ、と問い詰めたくなったが、その言葉の意味をすぐに察して海は頬を赤く染めて銀時の顔面を殴りつけた。
「痛ッ!?」
『お、まえは!!こんの腐れ天パッ!!』
「時間差ありすぎない!?」
『うるせぇ!!』
殴られた頬を撫でながら目を丸くする銀時へと近づき、再度右手を振り上げた海へと向けられた視線。
咄嗟にそちらの方へと目を向けると、何匹ものサルが糞を手にして海たちを見ていた。
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