第171幕
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「そういえばなんで兄さんは坂田さんなの?」
『は?』
突然の問いに海はぽかんと口を開けて呆気に取られた。
「だって、土方さんとか総悟とか近藤さんとかいるのに。なんであんなちゃらんぽらんの死んだ魚の目をしたような人を選んだの?」
書類を書いていた手は止まり、じっと朔夜は海を見つめる。どうして?と聞いてくる朔夜に海はふっと口元を緩めた。
『さぁ?なんでだろうな』
「坂田さんとは幼なじみなんでしょ?付き合い長くて気心知れた仲だから?」
『それもあるかもしんねぇけど……』
「けど?」
『なんだろうな。アイツじゃなきゃダメな気がした』
気心知れている仲なのは何も銀時だけじゃない。晋助も桂も昔馴染みであり、辛い時を共にした仲。
それでもこの手で掴みたいと思ったのは銀時だった。
『アイツのこと守るって決めたからな』
「……兄さんってさ」
『うん?』
「たまにわからなくなる時あるよね」
『何が?』
「上下関係?ネコタチ関係?」
『ネコタチ?』
「あ、ううん。なんでもない」
初めて聞く言葉に首を傾げると、朔夜は慌てた様子で気にするなと笑った。
『なんでこんな話の流れになったんだよ』
「なんとなく?兄さんとこういう話する機会ないじゃん?坂田さんからはよく聞くけど、兄さんからは坂田さんの惚気話聞いたことないからさ」
『あいつそんなに話してんのかよ』
「たまにだけどね」
自分の知らないところで銀時は自分の話をしているという事に少しだけむず痒さを感じる。別に嫌というわけではないが。
そういえば自分は言った事があっただろうか。ふとそんなの疑問が浮かんだ。銀時は会う度に好きだとか愛してるだとか言うけれど、あまり自分からは言うことがない。
そんな恥ずかしいことをよくもまぁさらりと言えるなと思うだけで、自分から言おうとはしない。本当はもっと銀時に伝えるべきなのだろうが、恥ずかしくて言いづらいというか、察して欲しいというか。きっと察して欲しいというのが破局へと一歩になってしまうんだろう。
「兄さん?」
『ちゃんと言うか』
「え?何を?」
思い立ったら吉日。また今度にすればいいかなんて言っていたらいつまでも言えなくなってしまう。そう思った海は腰を上げて上着と刀を手にした。
「どこか行くの?」
『ちょっとな』
「気をつけてね?」
『ん、朔夜はそれ今日中に終わらせておけよ?』
「はーい」
数センチほど積まれている書類を指差して言えば、朔夜はゲンナリとした顔で返事をして書類へと顔を戻した。
朔夜を部屋に残して海は縁側へと出る。庭では相変わらず山崎がミントンしており、海が表に出てきたのを見てラケットを背中へと隠した。
「ほ、補佐!お出かけですか!?」
『少し出かけてくる。何かあったら電話してくれ』
「はい!行ってらっしゃい!」
『行ってきます』
山崎に笑顔で見送られながら門をくぐり、海は万事屋へと歩き出した。
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