第169幕
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「こ、この人たち誰なんですか……」
「こ、この人ならわかるけど、この人たちになると僕にもわかんないや……」
カタカタと震える新八に朔夜は青ざめた顔で聞いたが、新八も首を横に振って知らないと答えた。
新八に手を引かれて飛び込んだのはお子様風呂。わけも分からず狼狽えた朔夜は兄に救いを求めようとしたが、それは屁怒絽の家族によって遮られた。
「いい湯加減ですねぇ」
ざぷんっと子供風呂に入ってきた屁怒絽の家族たち。朔夜たちを囲うように湯に浸かり、心地よさそうにしていた。
「あ、あの……あっちの大人風呂の方が温かくて気持ちいいですよ?」
大風呂を指差しながら銀時は屁怒絽に向こうの方がいいのでは?と促してみたが、屁怒絽は自分の種族は熱い湯が苦手なのだと笑った。
「水浴びが出来ればいいんですけど、向こうは小さくて……あれ?」
「へ?」
屁怒絽が水風呂の方を向いた瞬間、気の抜けた声を出した。その声にビクリと身体を震わせた銀時。今度はなんだと怯えながら屁怒絽の言葉を待った。
「おや、桜樹さん来ていたんですね」
「え?」
「おーい!桜樹さん!」
大風呂にいる海に向かって手を振る屁怒絽。まだ眠っている海は屁怒絽の声に気づく訳もない。
「おかしいですね。桜樹さんが返事しないなんて。もしかして何かあったんじゃ……」
「に、兄さんは今寝てるんです!」
目を細める屁怒絽に朔夜が慌てて口を挟む。「そうなんですか?」と首を傾げた屁怒絽は朔夜をじっと見つめた。
「な、なんですか?」
「今、貴方、彼のことを兄と呼んでいましたが……桜樹さんの弟さんなんですか?」
「え、あ、はい」
「そうですか。桜樹さんにもご兄弟がいらっしゃったとは」
「兄と知り合いなんですか?」
「ええ。何度かお世話になってます」
屁怒絽と普通に会話をしている朔夜の後ろで、土方と銀時は冷や冷やしながらその光景を見つめていた。海が居ない今、朔夜に何かあったらどうしようかと。
「桜樹さん、また忙しいんですか?」
「この間から忙しくて……」
「大変ですね。ご無理をなさってなければいいのですが」
心配気に海を見た屁怒絽。その横顔を見た朔夜はこの人は悪い人では無いのだと悟った。
銀時たちがあんな異常なまでに怖がる相手ではない。海のことを心配しているその姿は、見回りでよく会う町民たちと同じもの。
その事に気づいた朔夜は屁怒絽たちに対する警戒心が徐々に薄れていった。
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