第169幕
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眠っている海をそのままに朔夜は湯船へと浸かった。屯所の大浴場とは違った雰囲気に胸を踊らせて。
初めての銭湯はとても楽しく、興奮がさっきから止まらない。実家がまだあった時は手早くシャワーで済ませることが多く、浴槽にお湯を張ることなんてほぼ無かった。
屯所も大浴場はあるっちゃあるが、他の隊士達の目があるため一人でひっそりと入っていた。
シャンプーの泡を使って髪型を変えるなんて遊びなんか総悟に教えてもらわなければずっとやることは無かっただろう。
「楽しいなぁ」
この世に生まれてまだ十年ちょっとだが、人生がこんなにも楽しいと思えたのは海に出会ってからだ。
ちらりと海の方を見遣れば、すやすやと静かに眠っているのが見えた。本当ならば起こさないといけないのだが、ここ最近の彼の忙しさを考えれば、起こす気にはならなかった。
「お疲れ様、兄さん」
海に労りの声をかけて朔夜は浴槽から出た。視界の端では近藤が隣の女風呂を覗こうとドリルで壁に穴を開けている。近藤が器物破損、ならびに覗きの現行犯逮捕をされる前に止めなくては。
「はぁ……本当にこの人が上司で大丈夫なのかな」
ドリルで壁を壊し続ける近藤にため息を漏らした朔夜は己の上司の増えていく罪状に頭を抱えた。
「近藤さん、ダメですよ?そんなことしちゃ」
「えっ?なに??どうしたんだ?朔夜!」
近藤が動かしているドリルのせいで朔夜の声は掻き消され、近藤の耳にはちゃんと届かなかった。もうめんどくさいから放置してしまってもいいだろうかと諦めの念を抱いた朔夜の元へと二人組の男が姿を現す。
「あれ?朔夜くん?」
「新八さん!坂田さんまで……」
「よお。相変わらずだな、てめぇんとこの上司は」
呆れた顔で近藤を見やる銀時と新八に朔夜は苦笑いを浮かべることしか出来なかった。
「あ?ということは、なに?海もいんのか?」
「ええ、いますよ。今寝ちゃってますけど」
「は?風呂で寝てんの?風邪ひくだろうが」
「最近忙しかったんですよ。兄さんまた徹夜してたから。だから今はそっとしておこうと思って」
「いや、帰ってから寝かせろよ。そんな不摂生な生活してんのにこんな所で寝てたら体調悪くするだろうが」
ごもっともなことを銀時に言われてしまい朔夜はぐうの音も出ない。起こしたいのは山々なのだが、と呟けば銀時は深くため息を零し、頭をわしゃわしゃと掻きながら浴槽へと向かった。
「坂田さん!」
「こんなところで寝かしておけねぇ」
「でも……!」
「朔夜くん。寝かしてあげたいのはわかるけど、お風呂の中じゃ本当に風邪ひいちゃうよ。脱水にもなるかもしれないからさ」
銀時を引き留めようとした朔夜を新八が引き留める。諭すように優しく新八に注意された朔夜はこくりと頷いた。
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