第169幕
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ぴちょん、と水の跳ねる音と少し離れたところから聞こえてくる話し声をBGMに海はゆったりと湯船に浸かっていた。
今日はいつもの屯所の浴場ではなく、町の銭湯。
見回りを終えて風呂に入ろうとしていた海を引き止めたのは朔夜。今日は屯所の風呂ではなく、銭湯に行ってみたいと言った朔夜に海は面倒くさそうな顔をした。
見回りで疲れて帰ってきたのに、また外に出なければいけないのか、と言った海に朔夜は一言「ごめんなさい……」と呟いて悲しそうな顔で俯いた。そんな落ち込み方をされてしまっては、海も良心が痛む。
今日だけと同行することを告げれば、朔夜はパッと笑顔を浮かべて喜んだ。
先に身体を洗って湯船に浸かりながら朔夜たちを眺める。楽しそうに総悟と頭を洗っている朔夜を見て、たまにはこういうのもいいか。と微笑を浮かべた。
足を伸ばして壁に寄りかかり目を閉じる。心地いい温度のお湯に眠気が誘われてうとうとし始めていた。
『やばい……これは寝れる』
ここ数日の間、書類に囲まれていた海はゆっくりと休む暇もなく頭を動かしていた。ご飯を食べている時も次の書類のことを考えていたし、風呂の時も時間をかけたくないからとシャワーで終わらせていた。
こうして湯船にゆっくりと浸かるのはどれくらいぶりだろうか。
『少しくらい……いいよな』
近くには土方と近藤もいる。例え深く眠ってしまったとしても朔夜が声をかけてくれるだろう。
起きた時に驚いて溺れないようにと海は大風呂の隅へと寄ると、ひっそりとそこで寝落ちた。
⋆ ・⋆ ・⋆ ・⋆
「あれ?兄さん?」
身体を洗い終えた朔夜はきょろきょろと当たりを見渡す。近くにいると思っていた海は何処にも居ない。先程まで隣で自分と同じように洗っていたはずなのに。いつの間に居なくなってしまったのか。
「海ならそこにいんぞ」
「あ、土方さん」
海の代わりに顔を出したのは土方。土方が見ている方へと目を向けると、海は既にお湯に浸かっていた。
大きな風呂の隅っこにいる海は壁に寄りかかって目を閉じていた。
「え、まさか兄さん寝てるの!?」
「多分な。んなとこで寝てたらアイツ風邪ひくぞ」
まったく、と呆れながら土方は海の側へと寄った。
「ダメですぜ、土方さん。寝てる人を襲ったりしたら」
「襲わねェよ!!!」
「そんなこと言っておきながら海さんのこといやらしい目で見てるんでしょう」
「み、見てねぇよ!!総悟てめぇ、デタラメなこと言ってんじゃねぇ!」
眠っている海へと手を伸ばそうとした土方を総悟がにやにやと笑いながら茶化す。あれだけ横で土方が喚いているのに起きる気配のない海。
相当疲れているのだろう。少しくらいゆっくりさせてあげたい。そう思った朔夜は土方に向けて桶を投げつけた。
桶は見事土方の頭へとぶち当たり、土方はお湯の中へと沈んでいった。
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