第168幕
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「海くん?ほら、えっと……これは海やらなくていいから。な?だから下戻ろうな?ね??」
『……将軍にこんなことさせられないだろうが』
ふるふると震えながら海は真下のプールを睨むように見つめる。後ろでは銀時が引きつった笑みで海を引き留めようと手を伸ばしていた。
騎馬戦をやるはずだったのが何故か海は飛び込み台にいた。
騎手と騎馬を決めるためにじゃんけんをしたのだが、そのじゃんけんで負けてしまった将軍。それを見兼ねた海が将軍の代わりにと飛び込み台に来たのだが、恐怖で身がすくんでしまって飛び込めない。
「いいから!こんな事しなくていいから!!な!?」
『やれって言ったのはお前だろうが……』
「そりゃそうだけどよ……!だーっ!ほら、下戻るぞ!アイツらも心配してるじゃねぇか!」
神楽たちを見れば心配そうに海を見つめている目。
『ここでやらなきゃなんか……廃るだろうが!』
「廃らねぇから!海は海のままだから!なんも減らないから!むしろ俺のSAN値が減るわ!!」
固く拳を握って飛び込む決意をし、一歩前へと踏み出す。大きく息を吸っていざ、といったところで銀時は海の手を掴んだ。
「やめろ!!」
『銀……時?』
銀時の悲痛な叫びに慌てて振り返れば、泣きそうな顔。
「行かせねぇ……!」
『銀?』
「行くな、もう俺の手から──」
『あっ』
「え?」
銀時が最後まで言葉を紡ぐ前に海の足は飛び込み台から滑り落ちていた。海の手を掴んだままだった銀時も共に飛び込み台から落ちていく。
「な、なんでこうなるのォォォォ!!!」
『銀!!』
落ちながらも必死に銀時の身体を手繰り寄せて抱きしめ、自分が下になるように体の向きを変える。海に抱えられた銀時が驚きの顔で海を見たのを最後に二人はプールの中へと落ちた。
「銀ちゃん!海!!」
「桜樹!」
「ップハ!海ッ!!」
ザバッと先に顔を出したのは銀時。その後に続いて海も顔を出した。
『はぁ……はぁ……死ぬかと……』
「大丈夫か!?」
『大丈夫……』
「お前なんで俺の事庇ったんだよ」
『痛いから』
「は?」
『高いところから水面に落ちるのは衝撃が痛いんだよ』
それと無意識。と苦笑すれば、銀時は飛び込み台にいた時よりも泣きそうな顔をした。
「もうほんとやめろ。寿命が縮むだろうが」
『悪かったって。巻き込んでごめんな?』
「そうじゃない」
『なんだよ』
「あー……その、」
ガシガシと頭をかき視線を泳がせる。言葉の続きを待ってみたが、いくら待てども返っては来なかった。
結局、騎馬戦なんぞものはまともに試合になる訳もなく終わった。
『俺ほんと何のためにここにいんだろ』
プールの中でぷかりと浮いている将軍を見て、海は深く深くため息をし、屯所に帰った後の書類地獄に頭を悩ませた。
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