第167幕
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『もう二度とするかあんなこと』
「お疲れさまです、海さん」
無事に紗夜と花を家まで送ったその足で海は万事屋へと来ていた。
ソファに座る海に労りの声をかけてお茶を差し出してくれた新八に礼を言って湯のみを受け取る。
社会見学中、飲み物が飲めなかった海は喉がカラカラで水分を欲していた。湯のみの中のお茶はすぐに無くなり空になる。それを見かねた新八は苦笑いを浮かべて「もう一杯入れてきますね」と空になった湯のみを海から受け取った。
「それにしてもあのクソガキ、最後までお前のこと睨んでたじゃん。なんかしたの?」
『知らねぇよ……』
結局、最後まで嫌われている理由は分からなかった。紗夜も何も言わずに家へと入っていってしまった為、言葉を交わすこともなかった。
「つかさ、あのガキさ。あの花って子の事好きだろ」
『は?』
「なんかねぇ……あの目はそんな感じがするんだよね、うん」
『どういう感じだよ』
「んー……"私のものに手を出すな"って感じ?」
海の向かいに座る銀時は天井を見上げていた。銀時が言った言葉の意味を知ろうとしたが、銀時はそれ以上言うことなく黙った。
「(海は鈍感だからなぁ。きっとあのクソガキな嫉妬されてたなんて知らねぇだろうな)」
銀時から視線を感じて海は銀時を見やる。目が合うと銀時にため息を零されて、海は不機嫌そうに顔を歪めた。
⋆ ・⋆ ・⋆ ・⋆
後日、屯所にて書類整理をしていた海の元に山崎が海宛にと手紙を差し出してきた。
差出人は社会見学にて知り合った部下の娘。
手紙を受け取った海は暫しそれを見つめてから便箋を封筒から出した。
"お久しぶりです。以前は助けていただきありがとうございました。あの後、怪我の方は良くなりましたか?"
という文から始まり、つらつらと子供らしい歪んだ字で書かれていたのは紗夜の近況報告。
『嫌ってる相手に出すような手紙じゃねぇよなこれ』
数枚に渡る手紙を見てほくそ笑む海を山崎は不思議そうに見つめる。
『…………は?』
手紙の最後の文を読んだ時、海は目を見開いて絶句。
"同じ同性愛者としていつかゆっくりお話出来ればと思います。なにとぞ、この件については父には内緒にしてください。まぁ、どうせ貴方のことだから分かってなかったでしょうけど。一応"
"つかさ、あのガキさ。あの花って子の事好きだろ"
思い出したのは銀時の言葉。そんなことあるわけないだろうと流していたが、まさか本当にそうだったとは。
そして何より、海が銀時のことを好いていることを紗夜が知っていたなど。
『……あの……クソガキ……!』
手紙ですら小馬鹿にしたような態度の紗夜に思わず海は持っていた手紙をくしゃりと握りしめた。
次会ったら必ずあのクソガキを泣かす。そう心に誓って。
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