第167幕
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「「「「今日一日よろしくおねがいします!」」」」
『ん、よろしくな』
屯所の前でそわそわしながら待っていた子供たちに声をかけると、目を輝かせながら礼儀正しく頭を下げられる。その姿に海は笑みを零した。
「ほんとにあの桜樹さんだ……」
『うん?』
ぽつり、と女の子が零した言葉に海は小首傾げる。弟の朔夜よりもずっと下にある頭。目線が合うようにその場にしゃがみ「どうした?」と声をかければ、女の子は顔を赤くして勢いよく頭を横に振った。
「な、なんでもないでひゅ!」
噛んだ。きょとんとする海に女の子は益々顔を赤くさせついには涙目にまでなってしまった。
『え、おい……本当に大丈夫か?』
こぼれ落ちそうになっている雫を掬おうと彼女へと手を伸ばすが、それは彼女の隣に居た別の女の子によって叩き落とされた。
「…………触んないで」
予想もしてなかった事に海は数回瞬きを繰り返す。泣きそうな女の子を庇うように背に隠したその子は海をキツく睨みつけていた。
『(これはなんか厄介な匂いだな)』
ぽろぽろと泣き始めてしまった女の子を泣き止ませようとする子供らと未だにじっと海に鋭い眼光を向けてくる女の子。彼女を怒らせるようなことをしただろうかと海は思案してみたが、どれも当てはまらない。女の子を泣かせてしまったことについて謝ったのだが、逆に彼女の逆鱗に触れることとなった。
「こんなところ来なければよかった。やっぱり別の人に頼めばよかったんだよ、花」
泣いている女の子、花と呼ばれた子は大袈裟なくらい肩を揺らして俯いていた顔を上げた。
「やだッ!私、お母さんに頼んだんだもん!桜樹さんがいいって!!」
「こんな人のどこがいいの?実際に会ってみて嫌だったから今泣いてるんじゃないの?」
ズキッ、と頭の痛くなるような言葉を放つ女の子に苦笑いを浮かべた。
どうやら海が社会見学をすることは最初から決定済みだったらしい。元々、花という女の子に指名されていて。
「違うよ!これは、その……桜樹さんが……その……」
ごにょごにょと口ごもる花に女の子の雰囲気が怪しいものへと変わっていく。ピリッと張り詰めていく空気に海は一人気づいていて、どうしたものかと悩む。
「……花に何かしたら貴方のこと訴えるから」
子供らしからぬ低い声で唸るように凄む女の子に海は引き攣った笑みで頷いた。
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