第167幕
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『社会見学?』
朝食を済ませた後、海は近藤に呼び出されて局長室へと訪れていた。
正座をして近藤と向き合い呼び出された理由を聞くと、近藤はどこか誇らしげに頷いた。
「うむ。どうやら寺子屋で社会見学をしてくるようにと宿題が出されているらしい」
『それと俺にどういう関係が?』
「海にはその子供たちと共に見回りに出て欲しいんだ。既にトシも数人の子供を連れて見回りに行かしてる。この後、また子供たちが来る予定になってるんだ」
だから頼む。と頭を下げる近藤に海はぽかんっと口を開けた。
子供を連れて見回りに出る?そんな危ないことをしても大丈夫なのか。見回りの途中で何か事件に巻き込まれたりした場合どうすればいいのか。
『近藤さん、子供を連れて見回りに行くのはちょっと危険じゃないか?』
「ダメ……か?見回りに一緒に行く方が社会見学になると思ったんだが……」
海の指摘に落ち込んだ近藤は腕を組んで俯き畳をじっと見つめる。どうすれば社会見学になるだろうかと悩み始めた近藤に海はため息をついた。
『人通りの多いところしか行かない。それでもいいか?』
「え?」
『それなら例え攘夷浪士と鉢合わせたとしても、近くにいる人に子供を任せられるだろ。それと、子供の前では刀は使わないからな?』
「うん!うん!!それでいいよ!!」
呆れながら海は最低条件だと言いながら近藤にいくつか縛りを設けた。仕事内容を教えるだけであれば、刀を使う必要も無いはずだ。腰には差して行くが、使うことは無いと近藤に伝えてから海は局長室から出た。
子供達が来る前に上着と刀を取りに行こうと自室に戻る途中、廊下でばったりと総悟と会った。
「海さん、聞きやしたか?土方さんのこと」
『なにを?』
「土方さん、子供に仕事のダメ出しされたみたいですぜ」
『は?』
「詳しくは聞いてないんで知らないんですけど、どうやら社会見学で引き連れてたガキに法律について追求されて上手く答えられなかったみたいでさァ」
子供に法律を?と問返せば、総悟はこくりと静かに頷いた。なんだってそんな質問受けたんだ。今時の子供はそんな細かいことまで聞いてくるのか。
これから見ず知らずの子供を連れて己の仕事を見せることに多少なりとも不安を感じ、どうしたものかと逡巡したが、もうなるようになれ。と諦めた。子供に質問されたならば返せる範囲で返せばいいだろう。
「海さんも社会見学ですかィ?」
『なんかその言い方だと俺が社会見学するみたいに聞こえないか?』
「そんな事ありやせんよ。まァ……頑張ってくだせェ」
ぽん、と海の肩に手を置いてその横を通り過ぎていく。その背を振り返って見送り、姿が見えなくなってから海はまた深いため息を吐いた。
『……断ればよかったな』
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