第166幕
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「やっ、また会ったね」
そう言ってにこやかな笑みを浮かべる相手を冷たい目で見据える高杉。
この男は先程すれ違った時に海の前を口にしていた。自分がよく知る人間の名前なのか、はたまた単に名前が同じなだけの他人か。
こちらから聞くようなことではないからと黙ってその場を去ったが、やはり気になるものは気になる。この男に聞くのは癪だが。
「単刀直入で悪いんだけど……どのタイミングで言ってもきっと驚くから言うよ」
チリつく殺気と見開かれる瞳。言われなくても次の言葉は容易に想像出来た。
「死んでもらうよ」
「別に驚きゃしねぇよ。最初に会った時からツラにそう書いてあったぜ」
「さすがに察しがいいや。実は以前、侍ってやつをこの目にしてからこうしてやり合いたくてウズウズしてたんだ。なんでだろう?微かだけどあんたからはあの侍たちと同じ匂いがしたのさ」
あの侍"たち"
この男は海を知っている。先程聞いた名前は自分が知っている方の海だった。
ということは海はこの男とやり合ったという事になる。目の前の男は何事も無かったかのように立っているが、向こうはどうなのか。海の事だから死ぬということは無いだろうが。
「(あの天パが側にいるなら有り得ねェな)」
海の側にいるというのは気に食わないが、海の身を守っている人間としてはまだ役には立つ。
「奇遇だな。俺もその銀髪のバカ侍を殺して、側にいる黒猫をかっさいたくてウズウズしてんだ」
「ふ~ん。あんたも彼のこと知ってるんだ?」
「お前の方こそ何故そいつの事を知ってやがる」
「ちょっとね。彼ってなんであんな強いんだろうね。どれだけ殴っても蹴っても立ち上がってさ。まぁ、そうせざるを得ない理由作ったのは俺だけど」
「アイツはバケモンみてェなやつだからなァ」
「ホント、規格外って感じだったよ。楽しかったなぁ、海とやり合うの。ねぇ、あんた彼と知り合いなんでしょ?会わせてよ……って、これから死ぬやつに言う言葉じゃないか」
「残念だがその望みは叶えてやれねェな」
この男と海を会わせるなんぞするものか。この男から漂ってくるものはひと味違う。
海に魅入られた目をするこの男に。二度と会わせてたまるものか。
高杉はヘラヘラと笑う男をジトリと睨みつけた。
「神威」
そうこうしている間に高杉と神威と呼ばれた男の周りには母艦にいた天人達が武器を手にし、二人を囲うようにして立っていた。
「邪魔はするなと言ったはずだよね」
「フッ……邪魔なんざしねぇよ」
神威の後ろに居た天人が放った矢は神威の背に命中し、高杉に当たることは無かった。
全ては計画通りに事が進んでいる。
阿呆提督から受けた指示。今後、脅威となり得るであろう春雨第七師団の排除。
その第七師団の団長である神威の抹殺。そして、残りの団員たちは高杉の船によっておびき出される手筈となっている。
「(天人共に顎で使われんのは癪だなァ)」
前回の件についてはこちらにも利となるものがあったから手を貸した。真選組と関わるのであれば、それは必然的に海との接点が生まれる。万斉に海を攫ってこいと命令したが、万斉は海を連れてこなかった。
その代わりに、もう無くなったと思っていた海の狂気が未だに残っていることに気づけた。それだけでも良い報告だろう。
あいつのアレを飼い慣らせるのは自分しかいない。ただ押し込めるだけの銀時とは違う。海の欲求を満たせてやれるのは自分だけだ。
「次会うのが楽しみだなァ、海ィ」
毒矢を受け、己の刃をも受け止めてもなお動き続ける神威を眺めながら高杉はひっそりと一人で哂った。