第165幕
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「それで怒ってんのか?」
『悪いかよ』
「悪くはねぇけど……なんか恥ずかしい?」
自分のことを思って海は次郎長を殴ろうとしている。その事が嬉しいんだか悲しいんだか、銀時にはよく分からず戸惑った。
怪我してる身体であまり無理はして欲しくない。きちんと止めなくてはいけないのだが、それをしたくないと思ってしまう自分がいる。銀時の為に、と怒る海の姿が可愛くて、愛しくて。
それらを全部封じるように銀時は海抱き込む腕に力を込めた。
「なぁ、海」
『なに』
「俺の事思ってくれんのは嬉しいけど、もう大丈夫だから。やんなくていい」
落ち着かせるように頭を撫でてやると、海はゆっくりとこちらを振り向いた。
『……そう』
「うん。ありがとな」
気の抜けた顔をした海にホッと胸を撫で下ろす。
次郎長とて天人との斬り合いで満身創痍状態。その上で海に殴られたりしたら瀕死になるだろう。
下手したら海が次郎長を殺しかねない。そんな事になったら、自分がお登勢の旦那と交わしてきた約束を破ることになるし、海に無駄な罪の意識を感じさせてしまうかもしれない。
「(まぁ……殴られてんの見た時はスカッとしたけども)」
吹き飛ばされた時に見えた次郎長の驚いた顔は傑作だった。と思ったのは胸の内にしまっておこう。
「あーあ、もうボロボロじゃねぇか。病院行くぞ、病院」
『銀時の方がボロボロだろうが。俺は軽くだけど手当てしてもらってたし』
「え?誰に?」
海の一言にきょとんと首を傾げながら聞けば、海は次郎長を指差した。
「お前……手当てしてくれた奴をぶん殴ったのかよ」
『それとこれは別。手当てしてもらったことに関して感謝はしてる。つか、この怪我自体、あのおっさんに刺されたもんだし』
拗ねた顔を晒す海に銀時は呆れた顔を向けた。なんだか子供の言い訳を聞かされているような気分だ。
「なんか海さっきから色々と吹っ切れてない?」
『そんな事ない。ちゃんと抑えてるつもり』
いや、全然本音ダダ漏れな気がするんだけど?むしろ全部本音ですよね?
ふるふると首を横に振って否定する海。なんでそんな吹っ切れ始めたんだと疑問に思いながらも、海の着ているワイシャツにまた新しく滲み始めた血を見てハッと我に返り、病院へと歩き出した。
病院につくなり銀時と海は処置室へ運ばれた。そこでばったり会ったお登勢に海が吹っ切れたであろう要因を聞いて納得。お登勢の前で色々とぶちまけた海は、もう猫を被るのをやめたらしい。
「海が馴染んできてるようで嬉しいけど……なんかなぁ」
包帯を巻かれながら独り言を呟く。看護師が銀時の言葉に首を傾げていたが、そんな事気にせずに天井を見つめていた。
嬉しいようで寂しい。海を取られてしまったような気持ち。そんな事あるわけないのに、なぜだかそう思ってしまった自分を鼻で笑った。
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