第165幕
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「禁煙しろ、クソジジイ」
刀を鞘へと戻し、ふらつく身体で天人の屍を避けて広間を出ようと銀時は襖へと手を伸ばす。
銀時が襖に手をかけるよりも早く、誰かによって襖が開けられて身構える。まだあのババアの手下でもいるのかと刀へと手をかけていつでも抜刀出来る姿勢にしたが、銀時の前へ姿を現したのは敵ではなかった。
「海……?」
『また無茶したな』
明かりのない暗い廊下から銀時のいる広間へと踏み込んでくる海。ボロボロになった銀時を顰めっ面で見たかと思えば、その顔はすぐに銀時の後ろへと逸らされた。
『あんまこいつに無茶させないでくれよ。このバカも無理しやすいやつだから』
「そりゃ悪かったな」
『悪いと思ってないだろ。ハゲろよジジイ』
「え、海?海くん??」
何の話?と海に聞こうと手を伸ばすも、海は銀時の手に気付かずに次郎長へと歩いていく。
目を丸くしてその背中を見つめていたら次郎長が飛んで行った。
否、海にぶん殴られて部屋の壁へと叩きつけられていた。
「海ィィィィィ!?!?!?」
海の突然の行動に驚いて叫ぶ銀時に海は目もくれず、再度次郎長へと近づいていく。
壁に背中を打ち付けた次郎長は血を畳に吐いていた。そんな次郎長にまたもや手を振り上げる海。
「ちょ、ちょっとォ!?なにやってんの!?」
『離せバカ。まだお前の分が残ってる』
慌てて海の元へ走り、座り込んでいる次郎長を殴ろうとしている海を後ろから羽交い締めにして押さえた。
「いやいや、何それ!俺の分って何よ!え?じゃあ、さっきの一発目は誰の分!?」
『お登勢さんの分。あと二回は殴らないと気が済まない』
怒っている割には静かに喋る海にぞわりと悪寒がした。もしかしてコイツは本気で怒っているのだろうか。そろりと海の顔を横から覗けば、唇が切れるんじゃないかと思うほど噛み締めていた。
「あと二発で済むなら安いもんじゃあねぇか」
「ちょっ、お前も煽るんじゃねぇよ!!」
ケラケラと笑う次郎長を見た海がもがき始める。必死に海を押さえ込む。
『離せ』
「もう終わったんだからやめなさいっての。殴る理由なんて無いでしょうが!」
『お前に無くても俺にはあるんだよ!』
「なに?何にそんな怒ってんの」
もがき続ける海を抱き込むようにして止めれば、自然と海の身体から力が抜けていった。何がそんなに気に食わないんだと耳元で小さく聞けば、これまた小さい声で海が呟いた。
『……傷つけたから』
「うん?」
『お前を……銀時を傷つけたから』
それはどういう意味で?と聞こうか迷ったが、海の言い方的に外傷のものではないことを察した。
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