第165幕
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『お登勢さん!』
「なんだい。こんなところに来て……遊んでないで早く片付けてきたらどうだい」
天人達の隙をついて海はお登勢の元へと向かった。
何ともないといった風にしてはいるが、きっと怪我の痛みは辛いだろう。そんなお登勢を狙おうとする輩を追い払うために海はお登勢の傍から離れなかった。
「まったく、あんたは本当に世話が焼けるね」
『すみません……』
「謝る必要がどこにあるってのさ。私に謝るよりあの天パに謝んな。あんたが居なくなってから益々腑抜けたツラ晒してたんだからね。見てるこっちがイライラしてしょうがないよ」
ジト目でお登勢に見つめられ、海は再度深々と頭を下げた。自分がいない間にお登勢にも銀時にも大分迷惑をかけてしまったらしい。
『心配……させてごめんなさい』
「……別に私は心配なんかしてないよ。フラフラしてんのはいつもの事だろう。ちゃんと帰ってくるなら何も言いやしないさ」
『はい』
突き放しているように聞こえるが、ちゃんと海が戻ってくることを信じて待っていたとも聞こえる言葉。
本当にこの人は母親のような人だなと一人はにかんでいた海にお登勢は「なに喜んでんだい。とっとと終わらせてあのバカ迎えに行ってやんな」と海の背中を叩いた。
『~~~っ!』
「それくらいの怪我で悶えてんじゃないよ!」
『いや……今の丁度刺されたところなんですけど……!』
お登勢が叩いた場所は平子に刺された傷口。ずくりと痛み背中を押さえることも出来ない海は痛みに悶えてその場にしゃがみ込んだ。
「まったく情けないったらありゃしないねぇ」
『そりゃ傷口叩かれたら誰だって辛いだろうが!!!ふざけてんのかよ!』
お登勢の容赦ない一言にムカついて、敬語も忘れて素でキレれば、お登勢は目を丸くした。
『あっ……いや、その……』
「そっちが素だったわけかい。黒猫、黒猫と呼んではいたけど本当に猫を被ってたとはね」
はっ。と鼻で笑ったお登勢。海は冷や汗を垂らしながらお登勢を見上げた。
笑みを浮かべながらこちらを見るお登勢の顔には影がかかり、笑みの黒さが際立っていた。その顔に海はやらかした。と自分の発言に後悔したが、時すでに遅し。
「今度から猫被らず普通に喋んな」
『歳上の方ですからそんな砕けた話し方は失礼にあたるかと……』
「聞こえなかったかい?そんな気持ち悪い猫を被られたんじゃ話す気にもならないさね」
『気持ち悪いってなんだよ!!人が気をつかってやってんのに!』
「その気のつかいかたが下手だって言ってんだよ」
喚く海にお登勢は淡々と返す。下の通りを見遣れば、もう乱闘は終息に近づいていた。
「アイツらはアンタのところでどうにかなんないのかい」
『あの天人たちか?無理だろうな。アイツらの出処がどこなのかわかんねぇし……ましてやこの一件を近藤さん達が知ってるとは思えない』
これまで海が独断で動いていたのだ。直属の上司である土方には一応連絡はしてあるが、かぶき町でこんな事が起きているとは報告していない。
その為、地面に寝転がっているあの天人たちを捕まえるのは不可能に近い。
『町民に対する暴行罪で引っ張ることも出来なくはねぇけど……』
至極めんどくさい。本音を言ってしまえばそれに尽きる。相手が人間であれば、調書を取ってそのまま牢屋へと入れることが出来るが、相手は天人。しかもこの人数となると逮捕するために上に連絡しなくてはいけなくなる。
そうなると後が厄介だ。
「捕まえられないならそのままにしときな。自分らで元の住処に帰るだろう」
『いいのか?』
「構いやしないよ。私はこの街が守れれば」
ふっとお登勢が煙草の煙を空へと吐いた。
その横顔はどこか寂しそうに見える。そう思ったのは一瞬だけで、すぐにお登勢は人を小馬鹿にしたような笑みを貼り付けて下にいる連中へと声をかけた。
向かうは次郎長と銀時のいる場所。
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