第164幕
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「ほんとに兄貴は姐さんのこと大好きなんですねー」
「大好きに決まってんだろうが。なんだ?嫉妬か?やだねぇ、女はすーぐ嫉妬して。そんなんじゃ彼氏なんて出来ねぇよ?重たい女はウザがられるからね?」
「彼氏なんてまだいらないんで、大丈夫ですー」
民家の中から漸く顔を出した平子。素早く銀時が海を守るように前へと出る。
「やっぱりあの時に姐さんを殺しておけばよかった」
恨めしそうに海を睨む平子の目を遮るように今度は新八が一歩前へと踏み出した。
「銀さん」
「おう」
『新八!』
銀時から刀を受け取った新八は平子へと向き直る。その背中へと海が声をかけるが、新八は振り向かずにまっすぐ前を向いていた。
「心配すんな。新八なら大丈夫だから」
『だからって!』
「なぁ、海。お前は新八に何を教えたんだ?」
銀時の着物を掴んで新八を止めるように言おうとしたが、銀時の手によって海の口は塞がれて声を発せなかった。
「あいつはそんなに弱くねぇよ。だってお前が強くしたんだろ?」
違うか?と問われた海は何も言えず、ただ新八の背を見つめる。確かに新八に剣を教えた。それでも残る不安。
手にしていた銀時の裾を一層強く握り込めば、銀時がふっと微笑んで、海を優しく抱きこんだ。
「大丈夫。お前の弟子は優秀だよ」
安心させるようにゆっくりと撫でられる背中。
しっかりと刀を構えて立つ新八。きっと、新八なら大丈夫。そう自分に言い聞かせて、新八を見守った。
結果、新八は平子の刀を折って倒し、新八の隣にいた神楽も西郷を殴って寝かせていた。
「ほーら、心配なかっただろ?お母さん」
『誰がお母さんだ、誰が』
「海がお母さん。息子の初戦をハラハラしながら見守ってたお母さん」
『そ、れは……!』
「新ちゃんはそんな心配するほど弱くねぇよ。アイツは十分成長してる」
銀時も新八と何かあったのか、新八を眩しそうに見つめて微笑んでいた。
『行くんだろ?』
「仕方ねぇから行ってくるわ。海、ここ……」
『無理しない程度にやっておく』
苦虫を噛み潰したような顔で、ここを頼んでもいいか?と聞いてくる銀時に海は背を向ける。
まだ暴れ回っている奴らを抑えなくては。暴徒化し始めている街の人達を見据えて海はひっそりとため息を漏らした。
「さっきも言ったけど……無理だけはすんなよ?」
『ん、もうお前に怒られるのはごめんだからな』
「あー、いや、その、あれはほら、つい……」
『わかってる。ちゃんと理解してる。俺の方こそ心配ばっかかけてごめんな。その……ありがとう』
恥ずかしさで小さくなっていく語尾。最後の方なんか消え入りかかっていたが、しっかりと銀時の耳には届いていたらしく、銀時は口元を手で押さえながら身体を震わせて……。
「え、何この子可愛いんだけど。今すぐ抱き潰したいんだけど!?」
『お前もう行けよ……なんか俺がバカみてぇ』
素直にお礼を言ったのにコイツの頭の中は下の事しかねぇのか。照れながらも普段言わぬ言葉を口にしたのに、斜め上の反応をした銀時に呆れた海は冷たい目で銀時を睨んだ。
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