第146幕
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雨の中でのラジオ体操は本郷の病状を悪化させる結果となった。元々、先が長くないと医師から宣告されていたのだと涙ぐみながら話す母親に頭を下げることしか出来なかった。
病室では神楽と朔夜が本郷と話をしている。自分はそこに入ることはせず、壁に背を預けて立っていた。
あの日、朔夜を止めずに行かせていたら。きっともっと早く本郷を止めることが出来たはずだ。雨の中1人でラジオ体操させるなんてことは起こらなかったはず。
『俺のせい……でもあるか』
彼が倒れてしまった一因が自分にあるかもしれないと思うと、なんとも言えない悔しさが残る。
朔夜と神楽の友人を危ない目に合わせてしまったという後悔の念だけが蟠りとして残った。
「んで?結局、ラジオ体操は続けんのかよ」
『みたいだな。どうやら約束したらしい』
「約束?」
あれから数週間後。神楽と朔夜は相も変わらずラジオ体操を続けている。たった2人で。
そんな2人を見守るように公園の隅から眺める俺と銀時。
『本郷くんが戻ってくるまで。ハンコを押し続けるんだと』
「ふーん……健気なもんで」
『あの雨の日に行けなかった罪悪感もあるんだろ』
「罪悪感ねぇ……。なぁ、海」
『うん?』
「あの日は俺も神楽のこと止めたから」
ラジオ体操を終えて休憩している2人を見ていた目を銀時へと向ける。銀時は真っ直ぐと俺の事を見ていた。
「別にお前だけのせいじゃねぇから。アイツらのせいでもねぇよ」
そう言って銀時はまた神楽たちの方へと視線を戻す。銀時には何も言っていないはずだ。あの日、朔夜を止めたことも。雨の中、本郷を見つけて病院に連れていったことも。何も。
自分の中に残り続けている後悔も。
『たまにお前って怖いよな』
「え?なに??」
『別に。まぁ、なんだ。ありがとな』
小さくお礼を呟く俺に銀時はきょとんとした顔をしてから緩い笑みを浮かべた。
それから数ヶ月後。公園で行われていたラジオ体操は朔夜と神楽だけでなく、近所の子供たちも参加するようになった。
子供の健康の為と習慣づけられたイベントに俺も警察として警備にあたっていた。
『今日も大変そうだな』
ハンコを押す銀時に群がる子供たち。邪魔くさそうにしてる割にはどこか楽しげな銀時に自然とこちらも嬉しくなった。
「朔夜くんのお兄さん!」
『え……?』
バッと声の方へと振り向けば、そこには数ヶ月前にここからいなくなってしまった少年。
元気そうに笑って手を振る彼に俺は驚きと喜びで破顔した。
『おかえり』
「ただいま!」
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