第145幕
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今から数十年前、天人と攘夷志士達による壮絶な戦があった頃。
誰もが天人が勝利を収めるだろうと人々が諦めていた。そんな中であってもただひたすらに戦い続けていた若者たちがいた。
屈強で高度な文明をもつ天人達に抗い続けた彼ら。侍。
そしてその中でも一際目立っていた人物達がいた。もはや伝説と謳われる程の者達。攘夷志士の旗の元、天人たちに臆すること無く刀を振り続けた侍が──
「足を洗って隠居生活か。それも悪くない」
江戸から離れた寂れた村。そこには天人達が来る前のかつての日本のような風景があった。
煙草を吹かしながら手帳に書かれたメモを頼りに歩くスーツ姿の男。草臥れたスーツから察するに、忙しく動き回る仕事に従事ているのが分かる。
「だが、俺だったらこんな寂れた所……御免こうむるがな」
手帳に書かれた住所へと来ると、そこには永井と書かれた表札。古い木の扉をノックして見れば、中から高齢の男が顔を出した。
玄関で一言二言話をすると、男は家の中へと招き入れてくれた。
「記者風情が今更わしに何の用じゃ?」
マナーとして男に名刺を渡すが、まともに見ることもせずに懐へと仕舞われる。そんな事に意を介さず、本題へと入った。
「いやね、ちょっとお話を伺えないかと。言わずもがなかもしれませんが、今私、攘夷戦争について調べてましてね」
"攘夷戦争"の言葉に反応を示す男。この男は何かを知っている。記者としての勘がそう囁いている気がした。
「是非、あなたに教えていただきたい。あの戦争を従軍記者として、天人、幕府、攘夷志士。それぞれの視線で見、いくつもの戦いに従軍し、いくつもの死線を乗り越えてきたあなたに」
「わしゃ何も……」
そう呟いて顔を背ける永井に記者の古川は逃がすまいと食いついた。
「いや、あなたなら知ってるはずです永井さん!攘夷戦争を取材する中で必ずぶち当たる謎の人物の事を。伝聞だけが独り歩きし、今や伝説上の人物ともいわれるあの男の事を」
古川が言い切った後に続く沈黙。やはり語らぬか、と古川が諦めかけた時、永井も諦めたように口を開き話してくれる意志を見せてくれた。
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