第73幕
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隊士たちは朝から何やら騒がしく、楽しげに話をしていた。その話題の中身を知っている海は渋い顔で彼らを眺める。
近々、ある人物が江戸に帰ってくるという話が耳に入った。別に自分には何ら関わりのない人物だからまぁいいかと半分聞き流していたのだが、副長補佐になったからには逃げようがないということに気づいた。
『ああいうタイプはあまり好きじゃないんだよな。本心を隠すのが上手すぎるやつは人間味を感じられなくて……』
気を紛らわせようと縁側でお茶を飲んでいると、山崎の声がした。そちらへと目を向けると、数人の隊士が山崎の持っている刀を羨ましそうに見ている。
『新しい武器ね。まったく、子供じゃねぇんだから』
自慢げに刀を見せる山崎にため息が漏れる。防水加工された刀のどこがいいのか。どうせ使っていればその加工は落ちてくるだろうし、そもそもそんなものがあったって常に刀は血に塗れているのだ。手入れが多少楽になるだけで他に利点なんて無い。言ってしまえば刀は消耗品でしかないのだから。
山崎の刀に目を輝かせていた隊士たちは総悟の登場で羨望の眼差しを切り替えた。刀からヘッドホンのコードを垂らす総悟に唖然としているのだ。
『……アホらし』
人を斬る道具に何を付けているんだと問いたい。
『あー、そういえば今日出かけるんだっけか』
ふと思い出した予定に海は重い腰を上げる。見回りも兼ねて鍛冶屋に行くからついてこいと土方に言われていたことをすっかり忘れていた。
副長室の襖を開けて土方に声をかけようとしたら、当の本人は青筋を浮かべてぷるぷる震えていた。
ああ、キレる一歩手前だ。
「クソッタレ……!」
『おーい。心の声が漏れてんぞ』
「てめぇも来んのが遅ぇんだよ!」
『すまん、忘れてた』
「鶏か?てめぇの頭は鶏なのか?あ??」
『そうか。じゃあ、三歩歩いたら俺は今ここに来た理由を全て忘れる事にしよう。いーっち』
「悪かった!!悪かったからやめろ!!」
にーっと言いながら二歩目を出そうとした瞬間に土方に止められる。そんな必死な顔で止めるくらいなら最初からバカにしなければいいものを。
忘れていた自分が悪いとは分かっているけども。
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