第72幕
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『なんじゃこりゃ……』
新八と共に万事屋へと訪れると三人の子供たちに出迎えられる。個々に好き勝手遊んでいたらしく、部屋の中はぐちゃぐちゃに荒らされていた。
「すみません、本当にすみません……!」
『子供だからしょうがないとはいえ……なんでこんな事になってるんだ?てか、この子らは誰の子だ』
「今日の依頼人さんのお子さんたちなんです……浮気調査の依頼を受けたんですが、その調査報告を受け取るまでは帰らないって言ってて。でも、銀さんは今風邪を引いてて動けないし、かといって神楽ちゃんだけに浮気調査を任せるわけにもいかなくて」
それで海の所に助けを求めたとのこと。要は銀時と子供らの相手をして欲しいということだ。それについては請け負うにしても……。
『そっちでいいのか?』
「え?」
『新八と神楽が浮気調査の方でいいのか?分かってるだろ?相手に探られてることがバレれば逆上してくるかもしれない。喧嘩程度で済めばいいが、見つかったからといって危害を加えてくる可能性もある』
浮気調査と言えども危険と隣り合わせなのは変わらない。子供らでは入れない場所に行く場合もあるだろうし。
「大丈夫です。やりきってみせます」
『そうか。何か困ったことがあったら電話してくれ。すぐに対応する。それと雨降ってるから気をつけていくんだぞ?』
「はい!ありがとうございます」
不安そうに泳いでいた新八の目はしっかりと前を向いた。新八と神楽が意気揚々と浮気調査をしに出ていくのを見送ってから部屋の中へと入る。
「あら、貴方は?」
ソファに座っていた女性が海の方を振り返る。
『ここの店主の知り合いです。貴女がご依頼主さんで?』
「ええ……でも、あんな子供で浮気調査なんてできるの?」
『彼らも立派な従業員ですので。仕事はこなすと思いますよ。もし、彼らが持ち帰った結果が納得いかなければ自分も手を貸しますので』
「貴方も万事屋なの?」
『いえ、自分は万事屋じゃありません。ですが、浮気の証拠があれば今度は私が動けますので』
そう言いながら懐から警察手帳を取り出すと、彼女は真っ青な顔をして目を逸らした。
『密通ともなれば重罪。大半は示談にするようにと言われるでしょうが、相手が断れば死刑にもなりかねません』
「そ、そう……」
浮かない顔を浮かべながら俯く依頼主。
どうしたものかと考え込んでいると、後ろから襟を引っ張られて暗い部屋の中へと引きずり込まれる。
あまりにも突然の事だったので声を出す間もなくされるがまま。
「なんで海がここにいんだよ……」
『新八に呼ばれたんだよ。お前が風邪ひいてるって。仕事の依頼もあるから看病してあげられないって。だから代わりに頼むって頭下げられた』
「だからってわざわざ来ることねぇだろが。お前もあいつらに甘すぎなんだよ」
『この状況じゃどうしようもないだろ。新八もよく考えてから俺のところに来たみたいだし』
海を呼ぶ前にどうにか自分たちで解決できないかと考えたはずだ。二人で分担すればどうにかなると。でも、神楽一人では心許なく、悩んだ末に新八は海に頼ることを選んだ。
一度は断ってしまった身だが、今は頼ってくれて良かったと思う。これは二人で何とかできるようなものではないだろう。
『薬は?飯は食べたのか?』
「さっき粥食べた。薬は一応飲んでるけど……」
『食べて飲んでるならいい。今は寝てろ。横に水置いといてやるから』
銀時の方は大丈夫そうだ。それなら部屋の外で騒がしくしている子供らをどうにかしなくては。
寝室から出ようと襖に手をかけると、後ろから銀時に抱き込まれる。
『銀時』
「……海」
『なんだよ』
「もう少しだけ……だめ?」
弱々しい声で言われてしまえばその手は振り解けない。縋るように海の着物を掴む手に自分の手を重ねて撫でる。銀時の気が済むまでそのまま寝室でぼそぼそと話した。
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