第71幕
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「じゃ、始めましょっか。検事さん」
破牙の前に腰を下ろして銀時は緩く微笑む。その言葉を合図に詮議が開始される。
ここからは如何に破牙から出される弁論を銀時がどれだけ異議を申し立てられるかに掛かってくる。少しでも言葉選びを間違えようものなら奉行所の役人に却下されてしまうだろう。
『……しっかりな』
破牙の前に座る銀時に長谷川は期待の眼差しを向けるが、海は固唾を呑んで見守った。
「被告人、長谷川 泰三は二月二十一日七時二十五分、かぶき町ホームにて被害者A子さんの手を無理矢理握り、線路下まで引きずり下ろし、公衆の面前でキン肉バスターをかけた疑いがかけられております。これは明らかに痴漢行為であり、暴行罪、場合によっては殺人未遂などの罪に当たると思われます」
やはり検事は甘くない。海が思った通り、相手は痴漢だけではなく殺人未遂も視野に入れている。
「ホームにて多くの人々が被告人の犯行を目撃しています。詮議にかけるまでもなく被告人は有罪かと」
「異議あり!」
すっと左腕を上げて銀時は挙手をし、奉行所の役人が銀時の名を呼んで発言の許可が与えられた。
「被告人が被害者女性にキン肉バスターをかけたのは事実です。しかし、これが故意であるものなのか、更に言えば痴漢を目的として行われたことであるのかは甚だ疑問であります。この事件は事故である可能性が高い。被告人はホームの下に落下しそうになり、偶発的に女性にキン肉バスターをかけてしまったと思われます」
書類を見ながら弁論する姿は弁護士そのもの。これなら何も問題ないかもしれない。
銀時のことだからふざけ始めるかと疑っていた。だが、海の予想と反して銀時はしっかりとこなしているようだ。
「よって私は被告人の無罪を主張します!」
「偶発的?キン肉バスターなどという複雑な技が偶然かけられるとお思いですか?」
普通の人間なら無理だ。あんな技は咄嗟に出るものでは無い。普段から技を掛けるのに慣れているレスリングの人ならば……いや、レスリングをやっている人でもやらないだろう。
それを可能としてしまうのが彼らなのだ。ふざけていると言われても仕方ない。勝手に身体が動いてしまうのだろう。
「キン肉マンがあの技を編み出すのにどれだけ苦労したか。弁護人は分かっていないようですね」
人に技をかけるのがどれだけ難しいものか、という点について言われているのかと思えば、何故か話の流れはキン肉マンの話へとすり変わっていく。
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