第70幕
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「縄は持ってきてくれたか?」
面会室のガラスの向こう側に居る長谷川がくたびれた様子で開口一番にそんな事を言い出した。
長谷川が痴漢で捕まったと聞いた時は驚いたが、ついにそんなことにまで手を出したのかと呆れもした。いつもは冴えないおじさんだと思っていたが、人生色々と上手くいかなくなると犯罪に手を染めやすくなるのか。
万事屋に頼まれた依頼は人一人吊るしてもちぎれない縄を一本と、長谷川の妻であるハツの周辺調査。縄の使い道なんて聞かなくても分かってしまうので、そんなものは手元には無い。
「いや、売り切れてなかった。その代わり……」
懐から封筒を取り出して長谷川へと差し出す。中には数枚の写真。その写真は妻の調査をしている時に撮ったものだ。彼がこれを見てどう思うかは知ったこっちゃないが。
「シロか?クロか?」
「生きてりゃいいことあるさ」
「シロなのか?クロなのか?」
「あしたはあしたの風が吹く!」
「だからシロか?クロか?」
「あれ?髪切った?」
「殺せよ!俺を殺せ!!どうせ俺なんか生きてたって一生血みどろのロンドを踊り続けるんだよ!!もうずっと苦しみの螺旋階段を延々、上り続けるんだよ!もう全て終わりにしてくれ!」
泣き笑う長谷川をただじっと見つめる。ここまで落ちた人間にだけはなりたくはないななんて思いながら。横目で神楽と新八を見ると、あからさまに嫌そうな顔をしていた。
「お前らもさどうせ俺が痴漢したって疑ってんだろう?そりゃそうだよ、嫁さんにも見捨てられるような男だもんな俺は!電車にひかれそうになって気がついたらキン肉バスターなんてお前らどうさ信じてくれるわけねぇよな!赤の他人のてめぇらが……」
赤の他人という言葉に眉がぴくりと動く。
他人というには付き合いがありすぎる。それなのに長谷川は銀時のことをその程度の人間だと思っているらしい。
握りしめた拳を振りかぶり、銀時は正面のガラスごと長谷川の顔面を殴りつける。
「バカ野郎ーッ!」
「君!何やってるんだ!」
近くにいた看守に羽交い締めにされながら長谷川に向けて怒鳴り散らす。
「赤の他人だと?そんなこと思ってんならこんなとこ来やしねぇよ。赤の他人と思ってんならどこぶち込まれようが死のうがかまいやしねぇよ!赤の他人と思ってんなら……こんなもん、貸し借りなんてしやしねぇんだよ!」
長谷川の方の台に叩きつけたのは以前借りた痴漢ビデオ。捕まって拘置所で暇だろうと思って持ってきた。これがあれば夜は寂しくないはず。
「完全に疑ってるよね!?これさもう確定してるよね!?違うからねこれは!フィクションと現実の区別くらいつくからね!俺はやってないからね俺はー!」
.