第56幕
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久しぶりの非番の日。
銀時に少し外に行くかと連れられて団子屋へと来ていた。いつも食べている団子を頼むと店の奥から店主の娘さんが団子とお茶を持って出てくる。
『ありがとう』
「いーえ!あの海さんが来てくれるなんて光栄ですわぁ!」
『そんなに喜ばれるほどでも……』
「何言ってるんですか!海さんはとても人気なんですから!そういえば最近副長さんの補佐になられたとか。これそのお祝いです!」
『あ、ありがとう』
受け取った皿には二本余分に乗せられていた。お礼を言ってから団子に手を伸ばす。口いっぱいに広がるみたらしのあまじょっぱさについ頬が緩んだ。
「海、お前その顔やめろ」
『は?なんだよ』
「ダメだその顔は。団子よりお前食いたくなるから」
『一回死んだ方がその頭良くなるんじゃないか?』
真剣な眼差しで見つめてくる銀時の横腹に握りしめた拳をぶつける。ぐふっ!と聞こえた銀時の声を無視して海は視界に入った派手な店を眺めた。
『おじさん、あれは何?いつから出来たんだ?』
「あぁ、あれは最近出来た餡泥牝堕とかいう甘味処でね。あらゆる星の甘味を味わえるってんで、あっという間にあの人気。僅かにいたウチの客も全部吸い取られちまった」
『そう……』
確かにそこの店は人の出入りが激しい。入口には常に案内をする人間が立っていて忙しなく動き回っている。店に並んでいるのはほとんど若い女性だ。物珍しさというのもあるのだろうが、あの年齢であれば色鮮やかなものを好む傾向がある。彼女たちが団子屋より向こうの店を選ぶ気持ちは分からなくもない。
『新しく出来たものだから気になるんだろうな』
「海くんも気になるかい?」
『いや、俺は新しいものより慣れ親しんだものの方が好きだよ』
向こうの店に並んでいるものはどれも斬新なデザインのもの。美味しそうだとは思うが並んでまで食べたいとは思わない。それならおじさんの団子をのんびり食べている方がいい。ここなら時間を気にすることなく食べれる。
「銀さーん!海さーん!はい、これ私からのサービス!」
娘さんが追加で団子を持ってくる。それを受け取ろうとしたが、その手を銀時がガシッと掴んだ。
『銀時?』
「オヤジ、そろそろ帰るわ。俺たち」
「待て、跡取り。海くんもちょっと待って!」
「誰が跡取りだッ!」
ぼけっとしている間に銀時とおじさんは何か話をしていたらしく、何故か銀時は跡取りと呼ばれていた。
『まだ食べてる途中だろうが』
「そんなの後で食べればいいから!ここじゃなくて他の店でいくらでも食えるから!」
『このみたらしの味はここでしか味わえない。ほかの店だと甘いんだよ』
「なに細けぇこと言ってんだよ!置いてあればバクバク食べてるくせに!」
団子のタレの味は店によって違う。今の気分はここの店の味なのだと訴える海に銀時はゲンナリとした表情を見せた。
「食えるならどこだっていいだろうが」
『良くない。ここの味付けが一番美味いんだよ』
「そうかいそうかい……海くんはうちの店の団子が好きかい?」
嬉しそうににこにこ笑うおじさんに向けて頷く。好きなだけ団子を食べていくといいと言われたので、海は椅子へと腰を下ろす。黙々と団子を食べている間におじさんは銀時と何やら話し込んでいた。
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