第69幕(微裏)
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自室へ戻った海は一息ついてから隊服の上着を脱ぎ、衣紋掛けに掛ける。首元のスカーフを取り去り、ボタンをいくつか外す。何気ない仕草なのに、その姿がとてもいやらしく感じてしまう。
『……どんだけ書類溜めてんだよあいつは』
ぶつぶつ怒りながら机の上にある紙を一枚手に取る。海の背後から覗き込んでみたが、難しい文章ばかりで何が何だかさっぱり分からない。いつもこんなのを見ているのか。自分だったら発狂してしまう。
『あー……これ総悟の混ざってんな?』
あのクソガキがと悪態つきながら紙を分別していくのをじっと眺める。
いつも忙しいと言って中々会えない日があったりしたが、確かにこれは銀時に逢いに来ている暇なんてないだろう。毎日見廻りに出て、戻ってきたらこの書類の整理。
「(こいつ、いつか倒れるんじゃねぇの?)」
自分の仕事だけでなく、他のやつの仕事も請け負っているのだ。過労でいつ倒れてもおかしくはない。
かといって銀時が海にしてやれる事もない。むしろ、気苦労ばかりかけてしまっている。
「……ごめんな」
『は?』
「あっ、やべ」
思わず呟いてしまった言葉は海に拾われてしまった。こちらを振り返って見ても、海の視界に銀時の姿は映らない。
『聞き間違いか?今確かにあいつの……』
うーん?と頭を捻る海に銀時は必死に生きを殺しながら身を引いた。
透明になっているのになんでコソコソしなければならないのか。
「(部屋に一人……手を出すには絶好のタイミングじゃん)」
海の部屋に誰かが入ってくる気配は無い。ならば、と銀時は海の事を後ろから抱きしめる。
『は、はあ!?』
ビクッと跳ね上がる身体を押さえつけるように抱き込む。
『なんだこれ……!』
銀時の腕から逃げ出そうと藻掻く海の首元に顔を埋めて口付ける。すると小さく悲鳴をあげて大人しくなった。
「もう暴れなくていいの?」
『は……?』
「俺としてはもう少し嫌がってくれると嬉しいんだけどねぇ」
ピシッと固まっていた身体から徐々に力が抜けていく。
『ぎ、んとき?』
「んー?」
『なに、なんで……』
「うん。ビックリしたよな。俺も朝起きたらこんな状態になってて驚いたわ」
なんでなんでと繰り返す海を宥めるように抱きしめた。
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