｢なんでお前がここにいんだよ｣


『新八に手を貸してほしいって言われたから来たんだよ。お前こそ何やってんだよ。従業員と言えどもまだ子供だからな？自分はここにいて、子供を動かすなんて何考えてるんだ』


｢海、お前なんて言われてここに連れて来られたの？｣


『なんてって……』


そういえば新八から何も聞いていない。予定はあるかと聞かれ、無いと答えたら何かを手伝って欲しいくらいしか言われていなかった。具体的に何をするのかまでは知らないままだ。


｢新八ィ！なんで海を連れてきやがった！｣


｢だって海さんが一番適任じゃないですか！｣


｢適任じゃねぇよ！海はもう俺のなんです！｣


｢今はそんなこと言っていられる場合じゃないでしょう！｣


帰らせる帰らせない論争が目の前で繰り広げられているのを見つめつつ、海はそっと両手を握りしめる。


『騒がしい』


二人の頭に拳をこん、と落として黙らせる。


『それで？俺は何も聞いていないんだが。何でここに連れてこられたんだ？』


｢あ、すみません。実は九兵衛さんが──｣


今日呼ばれたのは柳生の野望を阻止するための集まりだという。合コンを行うことで、柳生が男性ではなく女性として生きていくことを選ぶように仕向けるというものらしいが……。


『それで上手くいくと思ってるのか？』


｢海さんがやってみてダメなら諦めます｣


『なんでそんなに期待を持たれてるのかは分からないが……まあできる所までは』


｢九兵衛さんに汚れたバベルが立たなければいいんです！｣


『新八、それ自分で言ってて悲しくならねぇの？』


｢……そこはつっこまないでください｣


新八から説明を受けている間に一人、また一人と人数が増えていく。その中になぜか桂と近藤が紛れ込んでいるという謎現象が起きていたが、横から現れた柳生が馬で二人を突き飛ばすという事故を起こしてくれたおかげで、互いに顔を合わせることなく終わった。


｢貴様は……｣


『久しぶりだな』


｢貴様も合コンという合戦に出陣してきたのか｣


『合戦？なんで合コンか合戦？』


｢違うのか？合コンは合戦だと妙ちゃんから聞いたのだが｣


ああ、だから柳生は馬に鎧の格好で来たのか。まるでこれから戦に行く様な姿の柳生にため息をしつつ、合コンについて一から説明する。


｢そうだったのか。それは失礼した。それよりも……｣


『なんだ？まだわからないことでも？』


｢僕はまだお前の名前を知らない｣


『確かに名乗った覚えはないな。俺は真選組副長補佐の桜樹 海。改めてよろしく』


緩く笑みを浮かべながら手を差し出すと、柳生は戸惑いながらも手を握り返してきた。





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