第68幕
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一週間の入院を経て、海は刀を預けている鍛冶屋へと訪れた。
『おっさん』
「あ?あー、やっと来たかい」
『悪い。今まで病院に居たからすぐに取りに来れなかった』
申し訳ないと頭を下げる海に職人は不思議そうに首を傾げた。
「うん?刀ならもう局長さんに渡してあるぞ?修理代もきっちり受け取った」
『近藤さんが?そんな話聞いてないけど』
「一昨日くらいか。万事屋の店主と一緒に取りに来て……あぁ、修理代は局長さんから貰ったが刀は店主が持っていったのか」
『銀時と近藤さんが?』
刀を代わりに取りに行ってくれたなんて話は全く聞いていない。近藤さんが持っているならまだしも、何故銀時が海の刀を受け取ったのか。
「なんだ?ダメだったか?お前さんが取りに来れないっていうから渡しちまったんだけどよ」
『あ、いや、近藤さんたちに渡したならいい。何も聞いてなかったか驚いただけ』
「そうか?ならいいけどよ」
職人に礼を言って外へと出る。屯所に戻らずに海はそのまま歌舞伎町へと向かった。
『なんで俺の刀を銀時に渡すんだよ』
近藤さんが銀時に渡したのか、それとも銀時が無理矢理持っていったのかは定かでは無い。だが、ここ最近の銀時との会話を思い返せば、刀を没収された理由も検討がつく。
刀を持たせたらまた事件に首を突っ込むと思われているのだろう。そんなことはしないと言ったってきっと聞きやしない。
心配性の恋人にため息を零しながら万事屋への道を歩いていると、前から見知った顔が来ているのに気づいた。向こうはまだ海の存在に気づいておらず、何かを探しているのか忙しなくキョロキョロと辺りを見渡している。
『仕事か?新八』
「あっ、海さん!こんにちは!」
『こんにちは。相変わらず新八だけは忙しそうだな』
「そんなことはありませんよ。そうだ、銀さんから聞きましたよ。海さん入院してるって。もう大丈夫なんですか?」
『今日退院してきたところ。怪我は治ったからもう大丈夫だ』
「そうなんですね。すみません、お見舞いにも行けず」
落ち込んだ新八を慰めようと頭に手を伸ばしてわしゃわしゃと撫で回す。恥ずかしそうにしながらメガネの位置を戻した新八は「あっ!」と何か思い出したように声をあげた。
「海さん、あの……お願いしたいことがあるんですけど……」
『なんだ?何か困り事か?』
「そんなに困ってはいないんですけど……あ、いやバベルの塔が立ったら困るんですけど……」
『バベルの塔?』
「な、なんでもありません!この後って予定とかありますか?退院したばかりでお願いするのもおかしいんですけど……」
『困ってるんだろ?俺でよければ手伝うから。今日はこのまま万事屋に顔を出そうと思ってた頃だから丁度いい』
「いいんですか!?!?」
余程困っていたのか、新八は海の両手を掴んで何度も頭を下げてはお礼の言葉を繰り返す。それほど大変な仕事を任されてしまったのだろう。
『子供に変な仕事を任せるなっての。銀時に会ったら一言言っておくか』
嬉しそうに前を歩く新八を不憫に思いながら後ろでボソリと呟く。一体どんな依頼を受けたというのか。新八がこれだけ困るほどだから厄介なものには違いない。
『……俺今刀持ってないけど大丈夫かこれ』
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