第67幕
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かしゃんっと音を立てて刀が手から滑り落ちる。もうこの刀も使い物にならないだろう。たった一回の実働で刀を潰してしまうとは。なんて勿体ないことをしてしまったのやら。
それだけの人数をこの刀で殺したのだから仕方ないだろう。
──お前は戦闘特化型だな。
いつだったかそんなことを晋助に言われたことがある。銀時や桂が近くにいなくて、海が戦況を変えるしかなかったとき。周りの仲間の士気を高める為に一人で天人を倒し続けていたのを見られていた。
目の前の天人を倒すことにしか考えていなかったから、近くで晋助が自分のことを見ていたなんて気づきもしなかった。もし、見られていると気づいていたならばあんな事はしなかったと思う。
なんで今更そんなことを思い出したのか。
あの時もこんな風に雨が降っていて、足元に沢山の死体が転がっていて……。まさに同じ状況だ。
『こんな状態にまたなるとはな。自分もまだまだ現役って……ッ……ことか、』
笑うと撃たれた脇腹に鋭い痛みが走る。それでも足を止めることは出来ない。
『土方……』
ある程度の敵は処理したけど、まだ残っている奴らもいるだろう。そいつらも片付けないと安心は出来ない。蔵場の方は土方に任せたから問題ないとしても。
『これはまた言われるかもしれないな……』
先日、刀を手放せと言われたばかりだ。それなのにまたこうして新たな傷を増やしている。次は何を言われるか分かったもんじゃない。
警察に所属しているうちは生傷が絶えないといっても、これは少しやり過ぎた気がしないでもない。
『言い訳を並べたところで聞きはしないしな……どうせ怒られんのは目に見えてんだ』
それなら多少の無理をしたっていい気がする。
落ちている刀を拾って、視界に映った浪士の首を斬り飛ばす。一人、また一人と首を飛ばしていくと、なぜか笑いが止まらなくなっていた。
『あれだけの人数が居たのに今やこれだけなんて。たった二人にしてやられたなぁ?』
「き、貴様ァ!」
『ははッ……威勢だけはいいな。それがいつまでもつやら』
顔を真っ赤にして斬りかかってくる浪士の腹を蹴り飛ばし、相手の肩へと切っ先を捩じ込む。痛みで悶え苦しむ姿に海は笑みを深くした。
『これで用心棒を名乗れるなんて……甘いな』
「あっぐぅ……ぎ、ぎゃあああああ!!」
ゴリッ!という音のあと、男の肩は外れてだらりと垂れる。そのまま刀を引き抜くと、地面におびただしい血と腕が落ちた。
『もう必要ないだろ?それ』
もう片方の腕も斬り落とそうと刀を振り上げると、どこからか爆発音が聞こえた。
黒煙が舞う中、聞き慣れた声が指示を飛ばしている。
『来たのか。それならあっちは大丈夫そうだな』
海の意識が逸れているのに気づいた男がその場を逃げ出そうと背を向けていたが、海が逃がすはずもなく、もう片方の腕も地面に転がっていった。
「海さん!大丈夫です……な、なんですかこれ!」
『こちらはなんの問題もない。お前たちは蔵場の確保、及び残存している部下たちの逮捕、倉庫内にある武器の押収に徹しろ』
「は、はい!」
手を貸そうとしてきた隊士の言葉を遮る。これの処理は自分でするために。
『両腕を斬られてもまだ意識を保っていられるとは……骨のあるやつじゃないか。だが……その分苦しみを味わうことになるけど』
本当は蔵場に同じことをしてやりたいところだが、そんなことをしたら蔵場の裏にいる人物が炙り出せなくなる。
代わりにこの鬱憤は彼で晴らさせてもらおう。
『彼女に手を出した罪は重いぞ?蔵場』
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