第66幕
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『ここか……』
「あぁ。本当にいいのか?この事は近藤さんは知らねぇ。援軍なんて来やしねぇんだぞ」
『知ってる。携帯も置いてきたし。孤立無援ってやつだな。いいんじゃねぇか?たまにはこういうのもあって。スリルがあった方がやり甲斐がある』
「おい、遊びじゃねぇんだよ」
『わかってる。まあいつも通りやればいいだろ?』
倉庫の扉を開けて静かに中に侵入する。中ではいそいそと武器を運んでいる者たちで溢れていた。そんな彼らを蔵場は見下ろしている。
刀を抜きながら土方と目配せして蔵場の背後へと回って首元へと刃を突きつけた。
「転海屋、蔵場当馬だな?」
『御用改めである。神妙にしてもらおう』
「あなた方はいつぞやの……」
「武器密輸及び、不逞浪士との違法取引の容疑でお前を逮捕する。神妙にお縄に就け」
刀を突きつけられているというのに焦りの色が見えない。もう逃げ隠れ出来ないというのに妙に堂々としている姿に不審に思いつつ手錠を取り出す。
手錠をかけようとする海に蔵場は笑みを浮かべる。
「友人の婚約者を躊躇いなく捕まえますか……中々
の神経をお持ちのようで」
「犯罪に手ぇ染めながら真選組の縁者に手ぇ出すたぁ、てめぇも太ぇ野郎じゃねぇか」
蔵場と土方の話を聞いている間にちりちりと増えてくる殺気。荷を運んでいる連中は未だにこちらに気づいていない様子だが、それ以外の者らが気づいたらしく、海達を囲うように近づいてきていた。
『どうやらそいつの確保は後にした方が良さそうだな』
「来やがったか。海、掴まれ!」
差し出された手を掴んで柵を越える。荷物運搬用のレーンを使ってその場を離れ、下の階へと着地した。どよめいている浪士たちを牽制しつつ、土方は用意していたバズーカを蔵場のいる場所へと向けて撃った。
『これはめんどくさい事になったなぁ。どうする?ホー○ズ君』
「切り抜けるしかあるめぇよ。てか、なんだその"ほーむ○"ってのは」
『知らないのか?シャ○ロッ○・ホー○ズ。少しは本を読む習慣をつけた方がいいぞ。ちなみに俺はモ○アー○ィ派だ』
「部屋にこもってると思ったらそんなもんばっか読んでんのか」
『面白いんだから仕方ねぇだろ。とはいえ、もうそろそろ部屋の中が本で圧迫されはじめてるんだよな。なあ、屯所に書庫作らないか?』
「作るわけねぇだろ。作ったところで誰も本なんて読まねぇよ」
浪士たちに囲まれ始めているというのに海と土方は談笑をしつつ刀を振るう。そんな二人に蔵場は渋い顔をしていた。
『気に入らねぇみたいだな。もしかして楽しんでると思われてんのかこれ』
「思われても仕方ねぇ会話してるからだろ。真面目にやれ」
『これでも真面目にやってるんだが。なんなら蔵場を捕まえたあとの報告書と押収品の保管場所も考えてる』
倉庫の中にはありとあらゆる武器が揃っている。下手な場所に保管しようものなら奪われる可能性もあるのだ。
今、浪士を相手しているよりも後の方がとても手間のかかること。
『報告書をまとめなきゃいけないこっちの身にもなって欲しいもんだ』
「それが出来たらこんな事やらねぇだろうが。報告書のことなんか後で考えろ。今はこいつらを片付けるのが先だ」
『はいはい。人使いの荒い上司だことで』
「文句言ってんじゃねぇ。帰れと言ったのに帰らなかったのはてめぇだろ」
『でも安心しただろ』
「……は?」
『なんでもない。これが終わったら数日休みで貰うかな』
土方に後ろの敵を任せ、海は前方の敵へと集中する。
持ってきた刀はいつも使っているものより少し重い。その分、刀身が厚くて壊れにくいのだが、海の機動力を下げてしまっている。
『この機会で少しは慣れておくか。じゃないとあれ以外使えなくなる』
特定の武器しか使えないとなると厄介だ。壊れた時に替えがきかないなんて。
彼らで試すというのは少々申し訳ないが、斬らなければならない相手なのだから仕方ない。
『上手く斬れなくても悪く思わないでくれな』
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