第66幕
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「銀さん、昨日は山崎さんと海くんと何を話していたんですか?」
「ああ?なんでもねぇよ気にすんな」
降りしきる雨を窓越しに見つめる総悟の姉。その顔は心配そうに悲しみを帯びている。
「そう言われると余計に気になります」
「ヤボなこと聞くねぇ。男が隠れてコソコソ話してたらこれの話題に決まってるだろう。あんたも見る?」
胸元から取り出したのはビデオテープ。いつだったかレンタル屋で借りたものだ。返却期限は遠の昔に過ぎていて、延滞金が凄まじいことになっている。
返そう返そうと思っていたけど、このAVに出てくる女優がどことなく海に似ていて手放しづらくなってしまった。今はもう必要なくなった物だが、以前はよく世話になっていた。
「もう!ふふっ……。男の子っていくつになってもそうなのね。集まっては悪巧みばかりして……もしかして海くんもそういうの見るの?」
「あいつは見ねぇよ。てか、見させねぇよ。あんな純粋な男の子が見ちゃったらそれこそ悪い事だろうが」
「そうね。海くんは銀さんと違って綺麗だものね」
「ん?なんか俺貶された?うん?」
「あの人たちもそう……男同士でいるときが一番楽しそうで。結局女の子の入り込む余地なんてないの」
寂しそうに笑うミツバをそっと眺める。
「みんな私を置いて行ってしまったわ。振り向きもしないで……」
「こんないい女を放っといて行っちまうなんざ……酷い連中だねぇ」
「えっ?ふふっ、そうでしょう?だから私、目いっぱい幸せになって、あの人たちを見返してあげるの。こんな年まで一人で身体のことでも、そーちゃんと海くんには心配かけてしまったもの」
「あいつは心配性だからな」
「ふふっ……それに世話焼きさんだから色んなこと手伝ってくれるのよね」
「そうそう。いい加減にしなさいって言っても言うこと聞かねぇんだよ」
「銀さんも海くんのあの性格に困ってるのね」
「困ってる困ってる。いくら注意しても直らねぇし。今だって──」
思わず言い出しそうになった言葉を噤んだ。不思議そうにこちらを見るミツバになんでもないと言って笑って誤魔化す。
今も土方を心配してあいつは不慣れな普通の刀を持ってこの雨の中走り回っているのだ。
行かなくていいと言ったのに。土方も来なくていいと言ったのに。それなのにも関わらず海は飛び出していった。置いていかれる側の気持ちを知っているくせに。
「銀さんは海くんのこと大好きなのね」
「へ?なんで急に」
「海くんの話してる時、凄く楽しそうに話すもの。今はとても心配そうだけど」
「そりゃ大好きだよ?目に入れても痛くねぇくらいには」
「そう。なら海くんもうちょっとあの世話焼きさん……なんとか……ごほっ!」
「おい、大丈夫か?もう休んだ方が……身体に障るぞ」
また発作が起きたのか苦しそうに咳を繰り返す。ミツバを寝かせようと手を差し伸べた瞬間、布団にぽたりと血が落ちた。
急いでナースコールを押して看護師を呼ぶと、ミツバはすぐにストレッチャーに乗せられて集中治療室へと運ばれて行く。その際に彼女の家族を呼ぶように言われ、もう後がないことを悟った。
「あのバカはどこほっつき歩いてんだよッ!世話になった人じゃねぇのか!」
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