第65幕
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『銀時、それ全部渡すなよ?いいな?』
「何言ってんだよ。依頼されたものは全部渡すに決まってんだろ?」
『それはダメだ。いくらなんでもその量は買いすぎだからな』
「仕方ねぇだろ?頼まれちまったんだから」
『頼まれたからってバカ正直に全部買うことはないだろ!ミツバさんの体調を考えたら分かるだろうが』
ミツバが倒れた次の日。総悟からミツバが入院したとの連絡が来た。屋敷での治療は限界があるし、またあのようなことがあった時にすぐ医者を呼べるようにと婚約者が病院に連れていってくれたらしい。
入院してしまったら話し相手が居なくなる。総悟はミツバが寂しい思いをしないようにと銀時に電話をしてきた。ミツバが病院にいる間、話し相手になって欲しいと。
『まったく……こんなの食べすぎてまた体調悪くなったらどうするつもりだか』
「食べない方が悪くなったりするかもしれねぇよ?俺みたいに」
『お前も甘いもの食いすぎだから』
「これでも減った方なんだけどねぇ」
『朝からいちご牛乳飲んでるやつがよく言う』
「あれは俺にとって水みたいなもんだから。水飲まないと死んじゃうでしょ?海だって水飲むじゃん」
『はいはい。もう好きにしろ。糖尿病が悪化しても知らないからな』
「いちご牛乳しか飲んでないから大丈夫ですー」
だからそれがダメだと言っているのに、銀時はぶすくれて海の話を聞こうとしない。もう注意するのもめんどうだ。
「おや、貴方は……」
ミツバの病室の扉を開けると、目の前に見慣れない男が立っていた。相手は海のことを知っているのか、軽く会釈をして微笑む。
「昨晩はありがとうございました。ミツバを屋敷の中に運んでくれたそうで」
『ミツバさんの婚約者の方でしたか。お礼を言われるようなことはありません。むしろ申し訳ないです。ミツバさんの体調のことを知っているのにあの時間まで振り回してしまったので』
銀時に目配せをして病室へと入らせ、海は婚約者の男と共に病室の前へと出た。
「そんなことはありません。きっとミツバも楽しんでいたことでしょう。申し遅れましたが、私、貿易業を営んでおります転海屋、蔵場 当馬と申します」
『蔵場さん……俺は真選組副長補佐の桜樹 海です。ミツバさんとは武州にいた時からの知り合いです』
「そうだったんですね。あぁ、引き止めてしまってすみません。どうぞミツバと話をしてやってください」
人の良さそうな笑みを浮かべて蔵場は扉の前から一歩身を引く。
「厄介だな……」
『どうされましたか?』
病室の扉に手をかけた時、蔵場がボソリと呟いたのが聞こえて首を傾げる。
「あ、いえ。なんでもありません。それでは私はこの辺で」
蔵場は慌てた様子でその場を去っていった。その姿はまるで海から逃げているように見える。
『なんだったんだ?』
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