第65幕
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万事屋までの暗い夜道を二人でゆっくりと歩く。
「あのさ。聞きたいことあんだけど」
『聞きたいこと?』
「その……あのストーカー野郎に拾われた時の話」
そういえば銀時にちゃんと話していなかった気がする。近藤に拾われたことは話したが、それからのことは何も言っていない。
『良い機会だから話しておくか。ミツバさんとも会ってるし』
近藤と会ったときのことは今でも鮮明に覚えている。あの時は本当に悪いことをしたと思う。
『崖下の川に落ちた俺を近藤さんが拾って、手当てしてくれたんだよ。刀傷とかあるのに不審がらずに甲斐甲斐しく世話してくれた』
あの頃に戦装束を着ている人間に手を貸すなんてご法度だ。誰かにバレようものなら近藤は戦争に加担したとして罰せられていたかもしれない。そんな状況下だったのにも関わらず、近藤は気を失っていた海を自分の道場まで連れ帰った。
当然のことだが、道場にいた者たちからはいい目で見られるわけもない。近藤が連れてきた手前、海に対して表立って何かをすることはなかったが、陰で散々言われていたのは覚えている。
『あの頃は土方にずっと睨まれてたもんなぁ。懐かしいもんだ』
「今じゃ海にベッタリじゃねぇか」
『そんなでもないだろ。まあ、仕事を手伝ってるからあれやこれやと呼ばれるけど』
「それだけじゃないと思うけどね俺は」
何故か土方を目の敵にしている銀時は苦虫を噛み潰したような顔で呟く。
『さっきの女の人。総悟の姉のミツバさん。あの人は付きっきりで怪我の手当てをしてくれたんだよ。自分も喘息持ちで辛かったはずなのに』
何度も海が寝ている部屋に訪れては包帯を取り替えたり、食事を運んでくれたりしていた。
自分の体調だってあまり良くなかったのに。咳き込みながらも包帯を変えようとした時はさすがに叫んで誰かに来てもらって止めてもらったが。それでも自分が面倒見るのだと言ってきかなかった。
──なんでそんなに俺に構うんだよ。俺はあんたらの友人でもなければ知り合いでもないけど。
──そうですね。でも、もうこうやってお話してるのだから私たちは知り合いですよ。
──変な人。
──あなたこそ変ですよ。お空から降ってくるなんて。飛行石、無かったんですか?
──いや、それ違うアニメだから。そんなもんねぇから!俺は三つ編みの女の子じゃねぇから!
──あら、あまりにも美人さんだからてっきり女性かと。
──あんた包帯毎日取り替えてるよな?散々人の身体見ておきながらそれはねぇだろ。
──ふふふ……冗談ですよ。
本当に変な人だった。周りから関わらない方が良いと止められていたのに、彼女は忠告を無視して海の看病に専念していた。
どれだけ感謝してもしきれない程の恩だ。
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