第64幕
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「貴方が銀時さん、なんですね」
海がドリンクバーに行った直後、ミツバがボソッと呟いた。彼女と会うのは今日が初めてだというのに何故か懐かしそうな目でみられる。
「うん?なんで俺のこと知ってる風な感じなの?そんなに俺の事話してるの?総司くん」
「総悟です」
隣に座っている総悟は知らないと首を横に振る。総悟が話していないとなれば、海が話したということになる。でも、海もミツバに会うのは数年ぶりだと言っていた。手紙などのやり取りはしていたようだが、海の性格上、人のことをベラベラと話すようなじんぶつではない。
「なに?もしかして俺有名人にでもなってるの?かっこいい万事屋の店主って!」
そんなことあるわけないと思いつつも期待を込めて言ってみる。今度はミツバが不思議そうな顔で首を傾げた。
「一度だけ貴方の名前を聞いたことがあるんです。海くんから」
「海から?」
「昔、まだ海くんたちが武州にいた頃に一度だけ。包帯を取り替えようと思って部屋に入ったら聞こえたの
「包帯?アイツ怪我してたの?」
「うん。お空から海くんが落ちてきたんだって」
空から海が落ちてきた。
ビックリでしょう?と笑うミツバに銀時はゴクリと唾を飲み込む。それはきっと海が銀時と高杉を庇った時に崖から落ちてしまった時のことを言っているのだ。
パフェグラスを持っていた手に力が入って、ぎしっとガラスが軋む。
「寝込んでた海くんが魘されながらあなたの名前を呼んでたの」
「俺の……名前を……?」
「ええ。たった一度だけだったんだけどね。とても悲しそうに呼んでたの」
「へ、へぇ……そんなことを……」
その時を思い出したのか、ミツバは悲しげな表情でテーブルに視線を落とす。
崖から落ちたあとの話はほとんど聞いていない。ただ、近藤に拾われたのだと海は言っていた。今無事に生きているのであれば、そんなにしつこく聞く必要は無いだろうと思っていたのだが、改めて話に出てくるとやはり気になってしまう。
「アイツの看病、あんたがしてくれたのか?」
「え?うん」
「そ。ありがとな」
落ちた先で拾われなかったら。彼女が海のことを看病してくれなかったら。きっと今頃生きてはいなかった。
こうしてまた海に会えたのは近藤たちのおかげだ。普段の行動を見ていたら感謝の言葉なんて言いたく無くなるけども。
『どうした?何かあったのか?』
戻ってきてこんな空気になっていたらそりゃ驚くだろう。両手に持っているコップを受け取りながら、なんでもないと呟く。
「ありがとう海くん。今ね、坂田さんからお話聞いてたの」
『話?』
「海くんたちが普段なにしてるのか気になっちゃって。もう、ダメよ?危ないことしたら」
『何を話したんだよ……』
それから当たり障りない会話へと切り替える。気になることは色々とあったが、海にもミツバにも聞けるような状態ではなかった。
「(あとで聞いてみるか)」
ミツバと笑い合う海を見つめつつ、銀時はどうやって海を家に連れ込もうかと悩んでいた。
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