第64幕
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「海くん。そーちゃんはいつもどうしてるの?」
『いつもですか?いつも……俺の手伝いや近藤さんの手伝いを率先してやってくれてますよ』
さらりと嘘をついた海に総悟は目を丸くして固まる。
総悟が普段していることは今言ったことと真逆のことだらけだ。仕事は放り投げるし、土方や近藤の言うことなど聞きやしない。最近では海の話ですら聞き流すことが多くなった。
だが、それをミツバに言うことは出来ない。彼女にそんなことを言えば、ショックを受けてしまう。過度なストレスを受けると喘息の発作が起きてしまう彼女には本当のことを話すわけにはいかなかった。
「じゃあ、お友達は?悩みの相談ができる親友はいるの?」
『と、友達……?』
ミツバから目を逸らして考え込む。総悟が友人と呼んでいる人物が居ただろうか。
歳が近い者と言えば、朔夜と神楽になる。朔夜とはよく話しているから友人という括りにしてもいいのだろうけど、悩みの相談を出来る相手かと聞かれたら難しい。
神楽に関してはもはや論外だ。喧嘩するほど仲が良いというが、二人は顔を合わせれば罵倒から始まる。それで仲が良いとは言えないだろう。
「海くん?」
『あ、いや、居るっちゃいるんだが……』
「どんな人なの?私会ってみたいわ」
『えっ、会いたい!?』
「そーちゃん、自分のことはあまり話したがらないの。だから気になっちゃって」
そこまで言われてしまったらもう断れる気がしない。どうしたものかと悩み始めた海に今まで黙っていた総悟が口を開いた。
「海さん、呼んでください。万事屋の旦那を」
『なんでまたアイツを選んだ……』
「朔夜は今、見廻りに行ってるんですぐには呼べないですし、あの人ならいつも暇……いえ、今日は予定が入ってないと思うんで」
だから頼むと言われたら首を縦に振るしかない。ここで渋れば、ミツバは当然不審がる。
ここに連れてくるまでに銀時に説明をしておけば何とかやり過ごせるだろう。
『あまり期待はするなよ』
「へい」
総悟の友人を連れてくるとミツバに告げ、海は一人レストランを出た。万事屋までの道中、何度も足を止めたが結局は目的地についてしまった。
少し躊躇ってからインターホンを押す。暫く待っていたら中から銀時の気だるそうな声が聞こえてきた。
「うっせぇぞババア!家賃は今度払うって言ってんだろうが!」
『お前、家賃滞納してんのかよ』
「えっ、海!?」
裸足のままで表に出てきた銀時は驚愕の表情。
「なに?どうした?」
『ちょっと頼みたいことがあってな。説明は道中でするから出かける準備をしてもらえるか?』
「行く行く!ちょっと待ってろ!」
嬉しそうに笑って銀時は中へと引っ込んでいく。これからめんどくさい事を頼むのに、あんな顔をされたら言いづらいじゃないか。
『帰ったらシバくからな総悟』
レストランへ戻る間、銀時に事情を話した。ガッカリした顔で銀時は話を聞いていて、申し訳なさでいっぱいになる。
『悪い、面倒なことを頼んで』
「仕方ねぇよ。そうするしか無かったんだろ?」
『まあ……そうなんだけど』
「お前がそんな顔することはねぇよ。あのガキからは報酬たんまりともらうけどよ」
『そうしてくれ……と言っても俺も片棒担いだ様なもんだからなぁ』
下手な嘘をつかなければこうはならなかった。今度からは気をつけよう。
レストランへと戻るとミツバから熱烈な歓迎を受けた。総悟の友人だと銀時を紹介したら、目をキラキラさせて喜ぶ。
「姉上、この人が……大親友の坂田くんで──」
「なんでだよ」
がしゃん!と音を立てて割れる皿。大親友という言葉に反応して銀時は総悟の頭をテーブルへと叩きつける。
『……これはいつものやり取りなので気にしなくていい。坂田くんはちょっと照れ屋さんだから』
「そうなの?」
銀時と総悟が言い合いしている間に苦し紛れのフォローを入れる。普通であればおかしい関係だと思うだろうが、ミツバは気づきもしない。なんせ、昔からこういうやり取りを見慣れてしまっているから。
銀時を大人しくさせるには甘いものを食べさせるしかない。そう思ってチョコレートパフェを頼んだ。
「あ、三つください」
『食べすぎだろ』
「これくらいないとやってられないの!」
『はぁ……好きにしろ』
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