第63幕
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『あの、すみません。ありがとうございます』
「いーえ。体調悪そうに見えたから連れてきちゃっただけよ」
礼を言われるまでもないと言うように、パー子はヒラヒラと手を振って微笑む。その笑い方がどことなく銀時に似ている気がして、どくりと胸が脈打つ。
パー子の元へと一歩踏み出そうとしたが、履きなれないヒールのせいで足首が変な方向へと曲ってしまった。
体勢を戻そうと足に力を入れるも痛みで力が抜けてしまう。傾いていく視界の中で、パー子が慌てた様子で海に手を伸ばしているのが見えた。
「海!!」
床に倒れ込む寸前にパー子の腕に抱かれた。女性にしてはガッシリとした腕。そして……。
『お前まさか……』
「や、やだわぁ!びっくりしたじゃない!お兄さんヒール履きなれてないのねェ?」
気持ち悪いくらい高い声を出すパー子に海は眉間に皺を寄せる。
「ほらもう着替えましょ?」
どこからか引っ張り出してきた椅子に海を座らせ、パー子はスタッフルームをキョロキョロと見回す。
「服どこにあるの?」
『あっちの更衣室に』
「そ、そう」
パー子の事をじっと見つめながら奥の更衣室を指さす。海の視線に彼女は狼狽えながら更衣室へと向かった。
『あの声は……』
"海!!"
倒れる前に聞こえた声は銀時の声だった。海を抱きとめた際に見せたあの必死な顔も彼がよく見せるものだ。
『……なんでアイツここに?つか、なんで女装なんかしてるんだ』
更衣室から海の服を見つけてきたパー子は苦笑いで海に手渡す。
「はい、これ。ほら早く着替えて」
『悪い。ちょっと一つ確認してもいいか?』
「え?なにを──」
腰に巻いてあるタオルをグイッと引っ張る。はらりと落ちたタオル中は男物の下着だった。
「お、お、お兄さん!?!?」
『こんなところで何してんだよ、銀時』
「いっ、いや、私はッ」
『もうバレてるんだからいい加減にしろ』
じとりと睨むように見れば、銀時は観念したように肩を落とす。結んでいたツインテールを外すと、そこにはいつもの銀時の姿。
「これも仕事なんだから仕方ないだろ」
『女装が仕事ねぇ?』
「スタッフが居ねぇって頼まれたんだから仕方ねぇだろうが!俺だって好き好んでやってたわけじゃねぇよ!」
『その割には楽しんでるように見えたが?』
「あれのどこが!?」
女装を楽しむというより普段食べられないものが卓上に並べられていて、その料理に目を輝かせていたと言った方が正しいかもしれない。
「大体、なんで海がホステスに来てんだよ」
『それこそ仕事だ。将軍の護衛でな』
「ふーん。お忙しいことで」
何故か銀時から疑惑の目を向けられ、海はその目から逃げるように自分の服を手に取る。ヒールを脱ぎ、ズボンに足を入れようとしたところで銀時に止められた。
「海」
『なに』
「さっき言ってたこと」
『は?』
「さっき海が言ってたこと。俺はお前を嫌いにならねぇよ」
『何言って……』
両手で顔を包み込まれ、至近距離で銀時と目を合わせられる。手を振り払おうとしたが、しっかりと掴まれてしまって振り払えない。
「絶対に嫌いになんかならねぇ。海が俺の事を嫌いになっても、俺はならないから」
『銀時、お前……』
「海、」
離せ、と叫ぼうとした言葉は銀時の口内へと消えた。優しく口付けられたかと思えば、貪られるような荒々しさへと変わる。息継ぎも出来ないようなキスに頭が溶け、されるがままになってしまった。
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