第63幕
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店内に入ると数人のキャバ嬢に出迎えられた。松平が貸切にしたと言っていたので他の客は見当たらない。
前回来た時より従業員が少ないのはそのせいなのだろうか。将軍と松平を相手にするだけならそんなに人数は要らない。店の中で人気の嬢を残して後は休みにしたのだろう。
「あら、海くん。また来てくれたのね」
席へと案内してくれたお妙が驚いた顔で海を見る。
『いや、今回も付き添いです』
「あらあら、お役人さんは大変なのね。ちゃんとお休みもらってるのかしら」
『もらってるから大丈夫』
「そう?海くんっていつもお仕事してるイメージだから。どっかの天パと違って」
お妙の言っている天パとは銀時のことを示しているのだろう。普段仕事しないでフラフラしているのだからそう言われても仕方ない。
「さ、中に入って。ほら皆も挨拶してちょうだい」
出来ればここで帰りたい。外へ出ていった土方や近藤のように自分も店外の護衛に移りたい。だが、そんなこと松平が許すはずもなく、将軍を連れて中へとずんずん進んでいった。
「ど、どうも」
横からぎこちなく声を掛けられる。眼帯をした女が小さくお辞儀をしていた。
『こんばんは。今日はお世話になります』
松平のことだからきっと騒ぐに違いない。酒が入ったらあの人は声がでかくなるのだ。将軍の方は知らないからなんとも言えないが、松平がいる時点で絶対店に迷惑をかけるに違いない。
そうなる前に一言添えておかなくては。
「こ、こんばんは」
『多分、騒がしくなると思いますので。もし迷惑だと思ったら気兼ねなく自分に言ってください。そうなる前に退散させますが……一応』
「え?あ、はい……?」
きょとんとしている眼帯娘。先程からオドオドしているのが目につく。緊張感を漂わせている彼女は少し驚いた表情を浮かべてから慌てて頷いた。
「その……気づいていないのか?」
『気づく?何をです?』
「いや、気づいていないならいい……です」
ホッとしたような顔で俯いて眼帯娘はお妙の後を追いかけていった。
『何の話だ?』
「おーい!海くん。早くこっち来い」
『今行きます』
松平に呼ばれて自分もテーブルの方へと向かう。そこには個性的な嬢が座っていた。
「い、いらっしゃいませー……」
どこに座ろうかと悩んでいた海に銀髪の娘が声をかける。他の嬢と違ってやたらとガタイがいい。しかも何故かタオル一枚という服装。
「こ、ここどうぞ」
銀髪娘がすかさず立ち上がって席を譲ってくれたのだが、海は首を横に振って断った。
『いや、俺は端っこで大丈夫です。動きやすい方がいいので』
将軍の身を護るのが今回の仕事だ。松平には遊びに付き合えと言われたが、ここにきた本来の意味を忘れてはならない。
銀髪の娘を元の場所に座らせ、海はその隣に腰を下ろす。将軍と松平が酒を酌み交わしているのを横目に海も目の前に置かれたグラスへと手を伸ばした。
「お兄さんストップ」
『うん?』
「これお酒だから。ね?」
ウインクした彼女は海の手の中にあるグラスを手に取って一気に飲み干す。空になったグラスに水を入れてかあの手へと戻した。
「お兄さんお仕事中なんでしょ?お酒飲んだらダメじゃない」
『まあ……そうなんですけど』
「仕事中の人はお水にしておきましょうね」
助かると言えば助かるのだが、それはキャバ嬢としてどうなんだと思ってしまう。
客に高い酒を飲ませて売り上げを出すのではないのか。こういうところで飲む水はやたらと高いと聞いたことがあるが、それでも酒には到底適わない。
ふふふと笑う嬢を不思議に思いながら渡された水をグイッと飲んだ。
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