第62幕
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近藤とゴリラ王女の共同作業が始まるというところで海は顔を逸らしたのだが、周りのゴリラたちの雰囲気がどうもおかしい。大人しく座っていたゴリラたちは雄叫びを上げながら立ち上がる。何事かと顔を上げた海の目に映ったのは吊るされている近藤の姿。そして式場の扉を開け放ったお妙。
『土方の説得は失敗したんじゃないのか』
この場にお妙は来ないと思っていた。近藤を助けるのはお妙にとってあまり良くない。彼女からしたらゴリラと結婚してくれた方が安心出来るだろう。
それでもこの場に現れたのは恩を感じているのかなんなのか。
近藤に向けて薙刀を投げたお妙は新八と神楽の手を引いて式場を出ようとする。その時、海と目が合った。
「海くんもこんな所に居たらダメよ!あんな汚いもの見たら目が腐るもの」
『それは同感』
早く式場を出なさいと声をかけられる。お妙の登場によって披露宴はぶち壊され、来賓のゴリラたちは怒り狂っていた。暴れるゴリラと隊士たちで取っ組み合いが始まる。この場に居続けたら危険だと判断し、海は式場を出ようと腰を上げた。
『総悟と朔夜は……』
周りを見渡しても二人の姿はどこにも無い。何となく銀時たちのテーブルの方も見たが目立つ銀色は見えなかった。
『あいつらどこに行ったんだ』
少し席を外すと言ってからかれこれ数十分ほど経っている。この喧騒に巻き込まれてはいないようだが、総悟なら進んでゴリラたちの間に飛び込んで行きそうだ。
飛んでくる食器やらバナナやらを避けつつ壁伝いに出口へと向かう。時折、隊士が吹っ飛ばされてくるが、彼らを助けてやる余裕はない。
『頑張って生きろ。お前らなら出来る』
なるべくゴリラの目に止まらないようにひっそりと動いていたが、それでも彼らは目敏く海の事を見つけて襲いかかってくる。ゴリラの見た目をしている癖に性格はイノシシのように猪突猛進だ。海を捕まえようと突っ込んでくるゴリラを蹴り飛ばして難を逃れるも、束になって襲われたら一溜りもない。
『いや、これは無理。少しは落ち着けよ』
四匹のゴリラに周りを囲まれて冷や汗が垂れる。ジリジリと距離を詰めてくるゴリラに為す術なく立ち止まってしまった。
「おい」
襲われる寸前に聞こえた声。そちらへと顔を向けたゴリラたちは皆、勢いよく吹き飛ばされていった。
誰かが助けてくれたようだが、開けた視界にその誰かは映らなかった。それから何度かゴリラに絡まれることはあったけど、彼らの手が届くよりも先に吹き飛ばされていく。もう少しで式場から出れるという所でトンッと背中を押されて弾き出された。
『悪い、助かった』
咄嗟に後ろを振り返るも誰もいない。
『……銀時』
姿は見えなかったが、誰だったかは分かる。
前回、別れ際に突き放してしまったというのに。それでも銀時は自分のことを助けてくれるのか。
「海!お前無事だったのか」
『そっちも大丈夫だったみたいだな』
駆け寄ってきた土方と総悟に片手を上げる。二人はホッとした顔で海を見ていた。
「あいつらに任せた俺がバカだった」
『頼む相手はちゃんと選べよ』
邪魔をするようにと頼んだのだろうけど、これでは相手の星との交流に支障がでる。そもそも近藤の話をちゃんと聞かなかった松平のせいというのもあるが。
今はとりあえず近藤がゴリラと結婚することが無くなったことを喜べばいいだろう。
『後は松平さんに頼めばいいだろ。俺は先に帰る』
鎮痛剤の効果が切れ始めてきたのか肩がズキズキと痛んできた。完全に切れてしまう前に薬を飲まなければ。
「一人で帰れんのか?」
『車を出してくれると助かるけど……』
「総悟、お前はこっちに残れ」
「土方さんが海さん送るんで?」
「ああ。だから近藤さんたちのことは頼んだ」
「なんで俺が。土方さんが残って片付ければいいじゃないですか」
「アイツらを焚き付けたのはお前らだろうが」
「なんのことやら。俺は知りやせん」
素知らぬ顔で総悟は会場の方へと戻っていく。その後ろ姿に土方は深いため息を零して疲れた顔でこちらに振り向いた。
「行くぞ」
『ん、』
土方と共に外に出ようとした時、不意に誰かに見られているような気がして会場の方を振り返った。
「どうした?」
『いや、なんでもない』
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