第62幕
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「左手にちょっとかかりました、どうぞ」
「おおっ……便器からこぼれました、どうぞ」
披露宴をぶち壊してくれと頼み込んできた近藤をその場に放置して銀時は厠へと来ていた。ゴリラまみれの空間はなんとも息苦しく一刻も早く出たかった。
「旦那、海さんと喧嘩したんですかい?」
「喧嘩なんかしてないけど?なに急に」
「じゃあ海さんに何か変なことでも言ったんですかい?」
「なんでそうなんのよ」
「柳生の一件から海さんの様子がおかしいんですよ。部屋に長くこもるようになって、巡回ルートも勝手に変えて」
「へぇ。ついにやさぐれたんじゃねぇの?仕事のし過ぎで疲れたんだろ」
巡回ルートを変えているのは何となく知っている。いつも同じ時間に万事屋の前を歩いていたのにそれがパッタリと無くなった。海以外の隊士はちゃんと万事屋の前を通るからルート自体は変わっていないのだろう。
ということは海が意図的に店の前を通らないようにしているということ。その理由については銀時が一番わかっている。
「旦那、あなたたちの関係についてとやかく言うつもりはありやせんが、あんま海さんを困らせるようなことをするんだったらこちらにもそれなりの対応させてもらいやすぜ」
「逆なんだけどね。あいつが困ってるんじゃなくて俺が困ってるんだけどね。つーか何よその対応って」
「そんなの決まってんだろうが。お前みたいなふざけた野郎にあいつは似合わねぇ」
いつの間にか厠に入ってきていた土方が銀時を睨みつける。
「は?なんでそうなるわけ?」
「てめぇなんかにあいつを任せられるか」
「じゃあ誰に任せられるって?あんたらだってアイツのことちゃんと見てられないだろう」
だから海は二度も攫われた。西ノ宮の時は自分のせいでもあると思っている。でも、真選組が西ノ宮が犯していた罪にもっと早く気づいていたらあそこまでのことにはならなかったはず。
「それはお前も同じだろうが。ふらふらしてるような奴にうちの隊士を預けられねぇ」
「預けてるだって?それはこっちのセリフだわ」
海は元々こっち側にいた人間だ。途中ではぐれて近藤の所に迷い込んでしまったが。
「野蛮人の集まりみたいな所に居させてるのが可哀想だわ。仕事だなんだってこき使われて、いつも疲れた顔してんじゃねぇか。あいつはお前らの使いっ走りじゃないんだけど?」
「海は俺の部下だ。お前に指図される謂れはねぇ」
銀時の事を強く睨んだ後に土方は厠を出ていく。隣にいた総悟を見るとやれやれと肩を竦めていた。
「悪気は無いんですよ。ただ、旦那と同じで海さん大好き過ぎるだけで」
「だからって人に噛みつきすぎじゃない?海はもう俺のなんですけど」
「それが気に食わないんですよ。今まで大事に手元に置いてたから余計に」
「そんなの……」
横からかっさらっていったのはそっちだ。子供の頃から大事に守ってきたのに。
「旦那、海さんと喧嘩してるなら早くどうにかしてください。あの人が元気無いと俺達も気になるんで」
それだけ残して総悟は会場へと戻って行った。
「言うだけ言って戻ってんじゃねぇよ。人の気も知らないで」
どうにかしなきゃいけないと思っている。でも、海が頑固なのは彼らだって知っているだろう。
モヤモヤした気分を払拭するように頭をガシガシと乱暴にかく。いつまでも厠で唸っていたって何も変わらない。とりあえず今は会場に戻ろうと厠を出た。
「今度はなんだよ」
開け放たれた会場の扉。そして中では真選組とゴリラが揉みくちゃになっている。
披露宴の主役である近藤が薙刀で吊るされているのが見え、この場にお妙が来ているのを察した。
「あいつまだ怪我治ってなかったよな」
先程見たとき海は右肩を固定しているように見えた。その状態でこんな乱闘に巻き込まれたら危険だ。
そう思って当たりを見渡す。
「……この状況でもバナナ食ってんのかよ!」
やっと見つけたと思ったら部屋の隅っこでモグモグとバナナを食べ続けていた。突っ込んでくるゴリラを躱しながらただひたすらにバナナを頬張っている。
「食い意地張りすぎだろ!」
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