第62幕
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テーブルの上に大量に置かれているバナナをむしって皮を剥く。最初こそは剥くのが難しかったが、今では手馴れてきた。それくらいバナナを無心に食べ続けている。
「兄さんストップ!」
「海さんそこで止めてくだせぇ」
『あ?』
「どう思いやす?朔夜」
「最高のアングルだと思うよ。うん、もう最高」
「ここが披露宴じゃなけりゃいいんだけどなぁ」
かじろうとしたバナナをそのままに総悟と朔夜の方を向く。二人で何かコソコソと話しているのは分かるが、何を話しているのかまでは聞こえない。
こちらをチラチラ見ながらガッツポーズしている二人をジト目で見る。
「あっ、ごめん兄さん。もう食べて大丈夫だよ」
「海さん、いくら暇とはいえ食べ過ぎじゃないですか?」
『バナナ以外に無いんだからしょうがないだろ』
「そりゃまあそうですけど。給仕に頼めば他のもん出してくれるんじゃないですか?片手でバナナ食べるの大変では?」
『そう思うなら早くこの式終わらせてくれ』
「それは無理ですよ」
今日は近藤とゴリラ王女の婚礼式に真選組一同出席している。見合いで散々な目に合っているはずなのに何故かゴリラ王女は近藤に惚れ込んだ。柳生の屋敷に乗り込んでいた間に近藤の婚約が松平によって進められていたらしく、屯所に戻った時には既に何もかも手遅れの状態だった。
『(怪我だって治りきってねぇっていうのに)』
朔夜は屯所にいたから何ともないが、総悟は足を骨折して松葉杖をついているし、土方も頭の包帯をまだ外せていない。
そして自分もまだ右肩が上手く動かせず固定している。利き手が使えないのは不便だとしみじみ思う。こうなった時のために左手を使う訓練でもしようかと思うほどには。
『土方の説得は上手くいったのか?』
「さあ。この場に姐さんが来てないってことはそういうことじゃないですか?」
『自信げに行った割にはなんもやってねぇな』
「土方さんに期待するのがそもそも間違いですよ。海さんが説得した方が良かったんじゃ?」
『暫くは会わない方がいい』
「姐さんとですか?」
『ああ』
お妙の前で見せてしまったのだ。トラウマまではいかないものの海に対して恐れを抱いているかもしれない。自分の友人が目の前で殺されそうになったのだから。
それにお妙に合えば必然的に銀時にも会う。あれから見回りに出ても会わないように万事屋の前を歩くルートを避けている。今は顔を合わせたくない。
「ねぇ、兄さん。坂田さんたちと何かあったの?」
『何かって?』
「だって声掛けに行かないから。坂田さんだって兄さん見たらすぐ声かけに来るのに。あっちは兄さんがここに居るの知ってるでしょ?」
『居るからって一々声をかけに来る必要は無いだろ。今日は遊びに来てるわけじゃない。それは向こうもわかってるはずだ』
「そうだけど……」
「そういや海さん見回りの巡回ルート変えてましたよね」
『それがなんだ』
「わざと旦那の家の前通らないようにしてるんですか?」
じっと見つめてくる二人から目を逸らしてため息をつく。
『さあな。たまたまだろ』
それ以上話すことは無いと言うように顔を逸らす。朔夜と総悟も不思議そうに首を傾げていたがそれ以上は聞いてくることはなかった。
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