第61幕
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ちっさいおっさんとの対決に戻って行った銀時を見送り、海は縁側へと腰掛ける。いつの間にか近藤や総悟たちも合流しており、周りは柳生家の門下生と近藤たちで入り乱れていた。
『大○闘ス○ッシュ○ラザー○か。やったことねぇけど』
「海くん」
騒いでいる彼らを眺めていると隣にお妙が気まずそうな顔で座る。
「ごめんなさい……私が間に入ったから海くんが……」
手当をしようとしてくれているのかお妙は手ぬぐいを持って海の右肩をじっと見つめていた。だが、その手はガタガタと震えていて明らかに手当が出来るような状態では無い。
彼女が怯えるのも仕方ないだろう。ただの切り傷なんかではないのだから。刀で傷つけられた右肩からはずっと出血しているし、着物からちらりと見えている白いのは骨だ。まさかここまで怪我しているとは思っていなかったから海も驚いている。
これは銀時に叱られて当然だ。よくこんなんで刀を振り上げられたものだ。興奮して痛みが分からなくなっていたとはいえ流石にこの怪我で動き回っていたなど馬鹿すぎる。
『触らない方がいい。手が真っ赤になるから』
「でもそれじゃ血が……!」
『もうすぐ終わりそうだからさ。そしたら病院行くから。だから大丈夫』
銀時と柳生の皿が割れ、残るは新八とじいさんの皿だけ。
決着がつくのはそう時間はかからなかった。
「新ちゃん……」
『これでこの決闘は新八たちの勝ちで終わったけど。お妙さんはどうするんだ?』
「私……?」
『そう。勝負には勝った。でもそれはお妙さんの事情を全く汲み取ってない。柳生と新八で勝手に始めた決闘だ。負けた柳生はお妙さんとの婚約は諦めると思う。でもそうじゃないだろ?』
彼女達の気持ちは勝ち負けではどうにもならない。二人でちゃんと話して決めなければ。
『お妙さんが柳生と結婚したいって言うならそれはお祝いするよ。違うならちゃんと柳生と話をしておいで。すれ違ってばかりの関係は寂しいものだから。伝えたいことをちゃんと言葉にして相手に言わないと分からないよ』
だから柳生の所へ行っておいでとお妙の背を押した。戸惑いがちに数歩柳生へと近づいてからお妙は海の方を振り向く。
『お膳立てしてもらったんだ。最後はしっかり締めろ』
突き放すように聞こえてしまうかもしれないが、ここから先は海たちにはもう何も出来ない。本来は二人の間で済ませなくてはいけなかったことなのだ。外野の人間が騒いでしまったからこうなってしまったわけで、最終的にどうするかを決めるのはお妙と柳生だ。
困ったように眉を下げていたお妙は意を決して柳生の元へと歩み寄る。倒れている彼女の元に膝を着いて介抱しながらぽつりぽつりと話だした。その顔に雫が流れるのが見え、海は彼女らから目を逸らす。
「随分とお節介なことやってんじゃないの」
『本当にな。相手がお妙さんじゃなければ放っておいてるところだ』
「なに?あの女に情でも湧いたって?横にいるやつに斬られてこんな怪我してるってのによ」
先程まで倒れていた銀時がしっかりとした足取りで海の元へとやってくる。頭から血を流してはいるものの口ぶりから察するにそれほど重症では無いみたいだ。
『これくらい犬に噛まれたようなもんだろ。そっくりそのままお返しもしたから』
「嘘つけ。柳生に比べたらお前の方が深いだろうが」
『少し骨が見えてるだけだから気にすんな』
「骨が見えてるとか何処のホラーよ。なにその日常的に見てるから大したことないみたいな言い方。怖いんだけど」
『そりゃこちとら毎日攘夷浪士に命張ってるからな。怪我なんて毎回見てる。骨だって運が悪ければ見るんだよ。俺のじゃないけど』
だからこれくらい何とでもないと言い返す海に銀時はげんなりとしながら頭をガシガシとかく。
「お前転職したら?毎日怪我するなんて異常だろ」
『警察なら仕方ない……っていうかこれなんの話しだったんだ?』
「そろそろ転職た方がいいんじゃねぇのって話」
『違うだろ。そっちはもう終わったんだろ?それなら俺はもう行くから』
「どこに」
『屯所。総悟が自分の仕事を朔夜に押し付けてきたってよ。あいつ一人で終わらせられるような量じゃない』
総悟の怪我の事を考えたら見回りに行かせるの難しいだろう。かといって土方に代わってもらうのも可哀想だ。二人ともボロボロの身で外に出て何かあったら危ない。
「お前さ自分も怪我してんの忘れてんの?」
『あっ』
「"あっ"じゃねぇよこのバカ!」
言われて思い出した。後のことを考えているうちに右肩のことが頭からすっぽりと抜け落ちてしまっていた。
「病院行くぞ。仕事なんか他のやつに任せろ」
銀時は海の左手を掴んで歩き出す。
銀時だって怪我しているのに人のことばかり心配している。そんな彼を吹き出すように海は笑った。人のこと言えないじゃないか、と。
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