第61幕
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「九ちゃん!!!」
誰かの声が聞こえる。でも自分には関係ない。今は目の前の奴に集中しなくては。
何度も手荒に使ってしまった刀はあっという間に折れてしまった。それでもまだ武器として使える。切っ先はどこかへ飛んでいってしまったが刃は少し残っているのだ。
『なぁ、そんなもんじゃないだろ?どうした?疲れたか?』
「だ、黙れ……!そんな怪我で何が出来ると……!」
『話せるならまだ余裕あるな。良かった。こんなもんでへばってたらつまらないだろ?』
「ぐっ……」
狼狽えている柳生を蹴り飛ばす。壁に身体を打ち付けて咳き込んでいる彼女の左肩へと刃を振り下ろした。
『これでお返しな?』
深く突き刺さった刀を無理矢理引き抜くと辺りに血飛沫が飛び散る。
傷口を押さえて痛みに喚く柳生に海は不思議そうに首を傾げた。
『そんなに泣きわめくようなことか?』
「ぐっ……うぅ……」
『やり返しただけなんだけどな。そうか。そんなに痛いか。なら……人にやることではないってことが分かったよな?』
にこりと笑いかけると柳生は真っ青な顔で海を見つめ返す。
『飽きた』
もはや柳生は戦意喪失している。そんな人間を相手してもつまらない。とどめを刺そうと腕を振り上げたが、刀が柳生に刺さることは無かった。
「お前なにやってんの?」
蹲る敵に向けて刀を構えた時、背後から聞こえた気の抜けた声。ゆっくりと振り向くとそこには見慣れた顔があった。
『なぜ止める?』
「なぜじゃねぇだろ。怪我してんのになにフラフラ動き回ってるわけ?下見てみろよ。お前の周り血溜まり出来てんのよ?」
確かに自分の周りは赤く染まっている。とめどめなく流れている血は海の足元を真っ赤にしていた。
「もうやめなさい」
刀を下ろすように言われても海は頑なに離そうとしなかった。
『こいつは敵だろ?ならば排除すべきだ。』
生かしておいては後々面倒になる。ここでトドメを刺しておかなければ。柳生に向き直って銀時の手を振り払おうとしたが、その手が外れることは無い。
「いい加減にしなさい。お前何しにここに来たの?」
『愚問だな。俺はここに……』
ここに何しに来た?
すぐに答えが出てこなかった。ここはどこだ?なぜ柳生と戦ってた?なんで自分は怪我している?
「そもそもなんでこいつこんな怪我してんの?」
「ご、ごめんなさい!私のせいなの」
ぼうっと考えているとお妙の声が響いた。
そうだ。お妙を庇った時に肩を怪我したのだ。彼女に刃を向けた柳生を始末しなくては。でなければきっとまた柳生はお妙に剣を向けるだろう。
『……なんで?』
「海」
『向けることは無い。だってこいつは』
「海、こっち見て」
『お妙を守りたいと言ったんじゃないのか?』
「海!」
大きな声で呼ばれてびくりと身体が跳ねる。銀時の方へと顔を向けると同時にガツン!と頭に衝撃を受けた。
『痛い……』
「そりゃ痛くしたからな」
頭突きされて痛む額を手で押さえる。やった本人も痛そうに顔を歪めていた。
『なんで頭突きなんかするんだよ』
「そっちの方が早いだろ。お前"またなってた"ぞ」
銀時の言葉に背筋が凍る。驚きで目を見開くと銀時はホッと安堵の表情を浮かべた。
「もう大丈夫そうだな。久しぶりだから俺もビビったじゃねぇか」
『なんで……だって今まで無かったのに』
「よく分かんねぇけど」
そう言いながら銀時はちらりとお妙の方を見る。そちらの方へと海も視線を向けるとお妙はいたたまれない表情で俯いた。
「とりあえずお前はそこで休んでろ。そんな状態で動き回るな」
『銀は……?』
そっと離れていく銀時の着物を摘んで小首を傾げる。振り返った銀時はきょとんとした顔。なんどそんな顔しているんだ?と不思議に思ったが、すぐにその顔の意味が分かって恥ずかしくなった。
『あ、いや、悪い。忘れてた』
「えー?なに?離れるの寂しいの?すぐ戻るから待ってなさいって」
『違う!違うから!決闘中ってことを忘れてただけだから!そういうことじゃッ』
「はいはい。寂しかったのね。うんうん」
気持ち悪い笑みを浮かべられてぶわりと顔が赤くなっていく。じっとりと見てくる目から逃げるために海は銀時の足を蹴りつけた。
『さっさと終わらせてこい!!』
「はーい。まったく愛が痛いっての」
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