第61幕
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「人の恋路を邪魔するとはお主も無粋なことをするのぉ」
「人の恋路だぁ?んなもん一方的なもんだろうが。恋ってのはなぁ、もっと柔らかいもんなんだよ。あんなシリアスムードたっぷりの鋭いもんじゃなくて。パフェみてぇに甘ったるいのが恋ってもんよ。あれじゃただの昼ドラだろうが。そんなもん平日に暇してる主婦しか見ねーよ」
「ふん……暇してる主婦しかみないじゃと?昼ドラはわしもみるぞ」
「そんなこと聞いてねぇよ!」
がつんがつんとぶつかり合う木刀。いつの間にか新八達のところまで来ていたらしく、自分たちが立っている塀の下には新八とお妙、そして柳生と海が見えた。
「おいおい……海は参戦しねぇって話じゃねぇのかよ」
「あやつか……ぼっちゃんを負かしたというのは」
ちらりと見た時海は柳生の相手をしていた。この決闘には手を出さないと言っていたはずの海がなぜ柳生と剣を交えているのか。しかも相手はやたらと荒ぶっている。
「そういややたらと海のこと睨んでたな……」
「あやつはお前の連れか?」
「あ?そんなもん聞いてどうする」
「あの男。死ぬぞ」
「んなわけねぇだろ。海が死ぬなんてありえるわけ──」
無いと言いきろうとした銀時の耳へと新八の悲痛な声が響く。咄嗟に新八の方へと顔を向けると、倒れているお妙に寄り添っている新八と座り込んでいる海に刀を突き刺している柳生。
「海くん!」
一体何が起きているのか分からなかった。先程までは余裕な顔で柳生の剣を受け止めていたはずなのに。
「おいおい……冗談だろ?」
「やはり坊っちゃんの方が強かったということじゃな」
海の右肩から刀を引き抜いて柳生は血を振り払う。二人の間に血が流れていくのが見えたところで海が怪我をしたのだと理解した。
「海……!」
「お主はこっちに集中せぬか」
「っく!てめぇ、邪魔すんじゃねぇ!!」
海の元へと行こうとするも邪魔をされる。怒りに我を忘れて木刀を振りかざせば腹部へと重たい一撃を食らった。
「心配せずともすぐに同じ場所へと行かせてやるわ」
「ふざけんじゃねぇ!!」
銀時が叫んだ瞬間、辺りに冷たい雰囲気が広がっていくのを感じた。鳥肌が立つくらいのゾワゾワした感覚はとても不快で、そしてこの感覚を銀時はよく知っている。
「な、なんじゃこれは!」
「まさか……!」
嫌な汗が額に滲む。この不快感はもう無くなったと思っていた。いや、暫く会っていなかったせいで忘れていたのかもしれない。
力なく項垂れていた海は刀を手にしてふらりと立ち上がる。怪我をしている右肩で刀を振り上げたかと思ったらそれを柳生へと思い切り振り下ろした。
「あやつはもう動けないはずじゃないのか!」
ガツンガツンと何度も打ち付けられる刀。あんな使い方をしていたら海の刀はすぐに壊れてしまう。普通の刀と違って海の物は薄いのだ。
柳生が海の刀を振り払った刹那、刀が折れて切っ先の部分が宙を舞う。それでも海は折れた刀で柳生を斬ろうとしていた。
「そこをどけ!」
「あやつは何者じゃ!」
「どけって言ってんのが聞こえねぇのか!お前んとこの跡取りが死んでもいいのか!!」
あのままでは柳生を殺しかねない。あの状態の海は見境がなくなるから。
「もう心配ねぇと思ってたのに……!」
ただ単にトリガーが引かれなかっただけだったのかもしれない。海がそうなる要因がたまたま無かっただけ。なら今は何が引き金となったのか。周りを見渡した時に見えたのは倒れている土方の姿。
きっと柳生が土方を倒したのだろう。それで海がキレたというのか。
「それはそれでなんか複雑なんだけど」
仲間思いなのは分かるが、怪我をしてまで相手を倒そうと奮闘するのはやめて欲しい。
休む暇もなく柳生に刀を叩きつけている海の後ろへと立つ。一息ついてから銀時はゆっくりと海に近づいていく。持っていた木刀を地面に落として無防備な状態で。そして彼が気づくよりも先に右手を掴んだ。
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