第60幕
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好き嫌いの哲学を語る北大路に何故か土方が食ってかかる。
『お前ら飯食いに来たわけじゃないだろ……』
呑気に食事をしている二人を呆然と眺める三人。この二人はいつやり始めるんだろうかと待っていると、土方が小ぶりの茶碗にチャーハンをよそってマヨネーズをふんだんにかけ始めた。
「海、お前確かカツ丼の時食ってたよな」
『だいぶ前の話だろそれ』
煉獄関を潰した時の話だ。総悟に事情を聞くためにファミレスに行った際に土方が取調べのカツ丼だと言って人数分用意したもの。あのときは確かに完食はした。帰りに胸焼けを起こして酷い目にあったけれど。
「これは第二弾だ」
差し出されるそれは前回のやつと何ら変わらない。下のご飯がチャーハンになっているだけであって上にあるものはマヨネーズだ。
『第一弾も第二弾も変わらないだろ。大体なんでナンバリングしてるんだよ』
「屯所にあるマヨネーズとここにあるマヨネーズは違うだろう。成分が違えば味も違う」
『そんな普通のマヨネーズかカロリーハーフかくらいだろ。一般人にはマヨネーズに違いなんか見分けられねぇよ』
「お前なら出来んだろ」
人の事をなんだと思ってるんだ。マヨネーズのスペシャリストか何かだとでも思ってるのかこいつは。
『いらない。俺はここに来る前に食べてきたから』
「少し食べたくらいで満足できるようなやつじゃねぇだろ」
『今日は動く事ないだろうからそんなに消費しない』
なんとかして目の前のマヨネーズから逃げようとしてみたが、土方は有無を言わさずに手渡してくる。
「食べ物の好き嫌いがあるものは弱点があるようなものですよ。いざという時にそれしか無かった場合どうするんですか?」
『マヨネーズしかないときの方が稀だろ』
「わかりませんよ。現に今そうじゃないですか」
『いざという状況を簡単に作り出すな』
なんなんだこいつらは。満足気にケチャップを頬張る北大路とマヨネーズ塗れのチャーハンを平らげていく土方。
今、決闘の最中だよな?と近藤に問いかけると、苦笑いでそのはずだと返される。食事が終わるまでは二人は動き出さないだろうと近藤は呆れた様子で二人を見守った。
漸く食事が終わった頃、土方と北大路は木刀を手にして立ち上がった。
『やっと始まったか』
「みたいですね……てか、海さんそれどうするんですか」
『……食べるしかないだろ』
庭へと出た二人を追って縁側へと出る。左手には先程土方に渡された茶碗。マヨネーズの匂いに新八が嫌な顔をして一歩後ずさる。
『そんな顔するなよ。土方スペシャル第二弾らしいから』
「いやそんなこと言われてもマヨネーズには変わらないじゃないですか。それ早くどうにかしてください。あんまり見たくないです」
「トシ見てないんだから部屋に置いてくればいいんじゃないか?後で聞かれたら食べたって言えば大丈夫だろう」
『捨てるのは流石にまずいだろ。わざわざ作ったんだから食うよ』
マヨネーズを掛けただけのものだが。
土方と北大路の対決を眺めながらマヨネーズ丼を口へと運ぶ。口いっぱいに広がるマヨネーズに泣きたくなったが我慢して胃へと流し込んだ。
「土方さん大丈夫なんですか?」
『大丈夫だろ。ちょっと手こずるかもしれないけど』
これまで攘夷浪士たちからの奇襲を受け続けた土方は気配を読むのが上手くなっていた。それを逆手に取った北大路の動きに翻弄されていく。
身を守るために培った勘が今は仇となっている。長年その勘に頼っていたからそう簡単に無くせるものではない。考えるよりも先に身体が動いてしまうのだから。
「海さん!土方さんが……!」
北大路に一方的に殴られている土方に新八が焦りを見せる。近藤と共に助太刀に行った方がいいんじゃないかと呟く新八に海と近藤は何も言わずに見守ることにした。
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