第60幕
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『派手にやってんな』
屋敷の周りをうろうろ歩いていると誰かがやり合った後のような場所へと辿り着いた。綺麗に障子が貼ってあった襖は無惨にも破かれて真っ二つに折れている。砕け散った木が辺りに散乱しており庭は散らかり放題。
そして所々に見られる赤。出血量は大したことは無いのだろうが怪我をしているのは一目瞭然。
『どっちが怪我したかはわからないな』
畳に落ちている血はまだ乾いていない。先程までここで戦っていたやつらがいる。もしかしたら近くにいるかもしれないと屋敷の中へと上がった。部屋の中へと入ると外とは比べ物にならないくらいの惨状。畳だけでなく襖や柱にもベッタリと血が付いていて壮絶な戦いが繰り広げられていたことが伺い知れる。
辺りを警戒しながら部屋から部屋へと移っていると人の気配を感じた。そちらへと顔を覗かせれば、新八と近藤が呆然とした顔で突っ立っている。
『二人とも無事か?』
「海さん!」
『誰かもうやり合ってるみたいだな。外がめちゃくちゃになってたけど──』
二人の側へと行った時に見えたもの。それに海はハッと息を飲んだ。
「総悟が……こいつがこんなところでやられるような奴じゃねぇ!」
『何があったんだ?』
「わからないんです。僕達も今来たところで……」
ぐったりと倒れている総悟の隣には柳生四天王の一人が倒れている。互いに血を流して居ることから察するに外の状態も部屋の中にちらほらと飛び散っていた血も彼らが戦っていたことによるものだろう。
『総悟がやられるなんて相当だな』
総悟の皿も相手の皿も割れているため相打ちだったのかもしれない。この決闘は皿を割れば相手の勝ちとなる。だから無駄な戦闘はしなくていいはずなのだが、総悟も男の方もかなり傷ついていた。総悟に至っては足を骨折したのか変な方向に曲がっている。
『恨みを買ってるとはいえ子供相手にここまで手酷くやるか普通』
「仇を取らねぇと……」
ボソリと近藤が呟く。その言葉に新八もカッと目を見開いて叫び散らす。
「そ、そうです!ぶっ殺してやりましょう!ど、どこだ!どこにいるんだ!!」
何かスイッチが入ったのか新八はやる気に満ちた顔でズンズンと先を急ぐ。手当り次第襖を開けていく彼の後を近藤と共に追いかける。
いくつもの部屋の戸を開けた先に居たのは土方とメガネを掛けた男。
『何やってんだお前は』
「見てわかんねぇのか。飯食ってんだよ」
『ドヤ顔で答えるな鬱陶しい』
総悟があんな状態だというのに何を呑気に食事なんかしてるんだ。
「これがねぇと始まらねぇんだよ」
そう言って土方はマヨネーズを片手にチャーハンを口へと運んでいく。もはやツッコむのも疲れる。
『それはお前だけだろ……と言いたいところだが……』
どうやら土方だけでなくその相手も同じようで。オムライスには既にケチャップが掛かっているというのにその上に更にケチャップをぶちまけていた。ケチャラーとマヨラーの奇跡の共演。何も嬉しくない。
ふと土方の方へと目を戻すと一際目立つものが目に入った。
『新八、一つ聞きたいことがあるんだけど』
「なんですか?」
『なんで土方の皿だけあんなにデカいんだ?』
近藤が付けている皿も新八の皿も手のひらサイズのもの。それなのに土方が抱えている皿は上半身を半分隠してしまえるくらいのサイズ。
皿には違わないのだが、あれは主に金持ちの奴が観賞用として飾っているタイプのものだろう。柳生がそんな高価な皿を渡すはずがない。
『土方が大将担ってるのか?』
「いえ……そういうわけではないんですけど……」
『じゃあなんであんな的のでかいやつ使ってるんだ』
「神楽ちゃんが自分の皿割っちゃったじゃないですか。それで土方さんと一緒に代わりの皿をもらいに行ったみたいなんですけど……」
『それがどうしてこうなった』
「……わかりません」
最初に渡されたものとは違うのは誰が見ても分かること。だがそれに関して誰も何も言わないということは更であればなんでもいいということなのか。それとも皿なんてただ付けているだけのもので、柳生側はお妙を取り戻しに来た新八たちを完膚なきまでに叩きのめしたいのか。
『(後者な気がするよな……)』
皿持ちではない海に決闘を申し込んで襲いかかってくるような奴がいたのだ。一応ルールは設けてはいるがそんなもの仮のものかもしれない。
『新八、気をつけろよ』
「え?なんですか?」
『怪我しないようにな』
「は、はい……」
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