第59幕
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ダラダラと喋りながら柳生家の道場へと足を踏み入れる。門下生の居なくなったそこでは呑気に食事をしている奴ら。なにやらその中の一人が暴れて居るようだが。
『何騒いでんだアイツら……てか、神楽お前それどうした』
「なんか降ってきたアル」
神楽の頭の上にあるお椀を取るとホカホカのご飯が見えた。呆然と立ち尽くしている神楽は頭に乗っかっているご飯も服についてしまった卵も拭こうとしない。
「おい、股から卵垂れてるぜ?排卵日か?」
『総悟ッ!』
海の後ろから顔を覗かせた総悟は神楽の下腹部を見て呟く。海が注意するのと同時に神楽も総悟にキレて投げ飛ばす。
「今のは総悟が悪い」
『土方の教育の悪さが浮き彫りになったな』
「俺のせいかよ!」
『お前しかいねぇだろうが』
「お前だってあいつと一緒に居ただろう!!」
『総悟のお守りをしてたのは土方だろ。それに俺があんな風に育てると思うか?外であんなこと言おうもんなら……斬り落とすぞ』
「ナニを?ナニを斬り落とすつもりなのお前」
『決まってんだろ。バカは死ななきゃ直らねぇよ』
「あ、首ね。首の方ね」
「いや、首の方で安心するかね」
安堵の表情を浮かべる土方に銀時からツッコミが入る。二人の後ろで何故か近藤と新八が股間を押さえて青白い顔をしていたのが見えて、海は小首を傾げた。
『総悟、お前神楽に──』
吹っ飛ばされた総悟の方を見ると先程まで言い争いをしていたヤツらに刀を向けられているところだった。
「いやぁ、よく来てくれましたね道場破りさん。しかし快進撃もここまで。我ら柳生家の守護をつかさどる……」
「北大路 斎」
「南戸 粋」
「西野 掴」
「そして東城 歩。柳生四天王と対峙したからにはここから生きて出られると思いますな」
総悟の首へと突きつけられている三本の刀。そして前へと出てきた東城という男の視線。じっとりと見定められるているかのような感じに思わず鳥肌が立った。
「あ?どうした」
『いや、なんか一人やたら気持ち悪いのがいないか?』
「大丈夫ですか?」
そっと土方の後ろへと身を隠す。心配げに新八に声をかけられ引きつった顔で大丈夫だと返した。
「ああ?てめぇらみてぇな者に用はねぇんだよ。大将出せこら。んだ?てめぇら、どこの100%だ?なに100%だ。柳生100%か?この野郎」
「あんたらのような雑魚、若に会わせられるわけねぇだろう。刀捨てな、人質が──」
どうなってもいいのかという聞き慣れたセリフと共に総悟の顔面へと切っ先が突きつけられる。人質がいれば抵抗など出来ないと踏んでのことなのだろうが、ここには総悟を助けようとしている人間は海しかいない。
相手の言葉通りに皆持っている武器を投げつける。飛び退く四天王の目を掻い潜って総悟をこちらへと引きずり戻す。
「た、助かりました」
『礼は銀時たちに言え。それと後で説教だからなお前』
「へい……」
危ない目にあったからか多少なりとも反省の色を見せる総悟に小さくため息をこぼす。
四天王たちは各々の武器を手に取って銀時たちの相手をしようと構えるも横から止められる。
「やめろ。それは僕の妻の親族だ。手荒なマネはよせ」
「若!」
呆れた様子で道場に入ってきた柳生は銀時たちを一瞥する。
「貴様……」
『久しぶりだな……なんて再会を喜び合うような仲でもないだろ』
柳生の目は海でピタリと止まり憎悪の目線へと変わる。
「随分と嫌われてるようだけど?」
柳生の視線に気づいた銀時がこっそりと海に耳打ちをする。
『別に何もしてないんだけどな』
「珍しいこともあるもんだ。お前が嫌われるなんて」
『普通のことだろ。全人類に好かれようなんて思わない』
ただ、あれだけハッキリとした敵意を向けられるのは久しぶりのこと。真選組に身を置くようになってから恨まれることは多々あるが、それは警察としての責務のせい。柳生は真選組だから警察だからという理由で海の事を嫌っている訳では無い。
あの時、柳生の刀を止めたこと。あの日、柳生を押し負かしたことによる悔しさからくる恨みだろう。
『なんだか嬉しく思うな』
「えっ、何言ってんの?」
『強者を前にして落ち込むのではなく、悔しさをバネにして相手を倒そうとする姿勢がなんとも』
「お前恨まれてるんだよね?」
『そうだと思うけど』
「俺そんなふうに育てたつもりはないけど」
『銀時に育てられた覚えは無いが』
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