第59幕
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「「「『うわぁ!?』」」」
襖をぶち抜いて倒れ込む。一番下に近藤、その上に海と銀時と神楽の順で積み重なる。三人分の体重を受けた近藤がグエッと鳴くが、そんなことを気にしていられない。
『近藤さん!ゴリラ王女何とかしてくれよ!』
「おい!なんとかしろよ!お前のペットなんだろ!?」
『銀!あれは近藤さんのペットじゃない!猩猩星の王女だ!』
「王女だぁ!?あんなんどこが王女なんだよ!動物園から逃げ出したゴリラだろうが!」
池から出てきた王女に追いかけ回され逃げるように近くの部屋へと飛び込んだ。正気を失っている王女は野生のゴリラのように海たちに襲いかかってきており、すぐ後ろで喚き散らしながらこちらへと手を伸ばしている。
ここは近藤に任せて逃げようとしたとき、誰かに見下ろされているのを感じて顔を上げた。
『お前確か……』
「貴様はあの時の……!」
海たちを見下ろしていたのはホステスにいた人物。柳生九兵衛と名乗っていたそいつは海のことをキッと睨みつけていた。
「みんな……さようなら」
柳生のそばに居たお妙が涙ながらに別れの言葉を告げる。突然そんな事を言われたもんだから訳が分からず呆気に取られ、その間に柳生はお妙を連れて部屋を出ていこうとしていた。
「あっ……姉上!!」
『新八、そっち頼んだ』
「海さん!!」
姉を連れていかれて愕然としている新八の代わりに駆け出す。
細身の身体で人一人担いでいるはずなのに素早い動きを披露している。やっとその姿を見つけたかと思えば、相手は追っ手が来ることを予想していたのか刀を手にして待ち構えていた。
「貴様……何者だ。何故僕達を追う」
『なんでって理由は一つだろ』
「海くん!私のことはもういいから!」
『良くない。唐突にさよならなんて言われて理由も聞かずに行かせられるわけないだろ。新八も何も知らなかったみたいだし……それに別れを告げた本人がそんな顔してたら追わない訳にはいかない』
そう言ってお妙に笑いかけると彼女は目を見開いてからサッと顔を逸らした。
「貴様には関係ない。これは僕と妙ちゃんの問題だ」
『勝手にしろ、と言いたいところだがそうもいかないんだよ』
置いていかれた新八の顔を思い出したらこのままお妙を柳生と行かせるわけにはいかない。
「僕たちの邪魔をするなら貴様はここで斬り伏せる!」
「九ちゃん!」
お妙の制止の声も聞かずに柳生は刃を振り下ろす。
『血気盛んなのはいいが、相手の力量を測る前に突っ込んでくるのは無謀だと思わないか?』
「なに……!?」
振り下ろされた刀を鞘で防ぎ、がら空きになっていた柳生の腹部を思い切り蹴飛ばす。近くの壁に背中を打ち付けて苦しげな顔で座り込んだ柳生の元へと歩み寄ろうとした海の前にお妙が手を広げて滑り込む。
「海くん!やめて!」
『やめろといわれてもな。先に刀を抜いたのはそっちだし』
「それは……!」
『それにそっちはやめる気ないみたいだよ?』
悔しげに顔を歪ませる柳生は負けじと立ち上がろうとしていた。
「九ちゃん!」
「この男だけは……ここでッ!」
『随分と嫌われたもんだなぁ』
怒りを滲ませた目で睨みつけ、刀を握りしめて迫ってくる。そんな柳生を軽くいなして地面へと押し倒した。
「クソッ!」
『しつこい。忠告はしたはずだ』
同じことを繰り返す柳生にため息が出てしまう。
『これで柳生家の跡取りなんてな』
「き、貴様ァァァ!!!」
バカにされてブチ切れた柳生は力任せに刀を振り回そうとした。その手を踏みつけて押さえてしまえばもう身動きは取れない。
「海くん!もうやめてあげて!!」
『理由は?』
「え……」
『こいつについていく理由』
「それは……」
『新八にちゃんと説明したのか?』
「新ちゃんには……言ったわ」
『納得してない様子だったけど』
新八もお妙本人も柳生について行くことに納得していない。そもそも柳生とお妙の関係性が分からない。
「妙ちゃんは僕の許嫁だ。嫁を迎えに来て何が悪い!」
『許嫁、ね』
これは一筋縄ではいかなさそうだ。ここは一旦引いた方がいい。
『お妙さんは柳生について行くことでいいんだな?』
「えっ……う、うん」
『わかった。じゃあ、行っておいで』
「い、いいの……?」
『よくはないけど。まあ、お妙さんに危害を加えることは無さそうだし』
嫁だと言っているのであればお妙に傷をつけることは無いだろう。それならば少しの間くらい行かせても大丈夫なはず。
『それに……そっちで話し合いも必要だろ?』
戸惑うお妙に微笑み掛けて海はお妙を柳生の元に残した。
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