第58幕
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『流石にペットは言い過ぎなんじゃないか?』
「しょうがねぇだろう!アイツらにゴリラと見合いしてたなんてバレたらなんて言われるか!」
『まあバカにされて笑われるだろうね』
「そもそもなんでアイツらここにいるの!?何してんの!?」
『大方、屋根の修理でもしてたんじゃないか?上に居たみたいだし』
ゴリラ王女によじ登る銀時と神楽を眺める。もうこうなってしまったからにはどうしようもできない。ペットではなく天人の接待だと言えばまだマシだったかもしれない。
『とりあえず王女を連れてここから移動したほうがいいと思う。外にいれば銀時たちの目があるから部屋に戻る方が得策かも』
「そ、そうだな!」
海の提案を飲んだ近藤はゴリラ王女の手を引いてこの場を立ち去ろうとする。その瞬間、近藤の袴からころんっと何かが落ちた。
それと同時に目の前が真っ暗になる。
「はい、見ちゃダメでーす」
『今度はなんだよ』
「見なくていいから。あんな不浄なもの見たら海の目が溶けちゃうだろ?」
『不浄なもの?』
「銀ちゃん、あれゴリラの袴から落ちてきたネ」
「汚ねぇ野郎だな。ところ構わず出すなんてよ」
『銀時、手を離せ。これじゃなんもわからないだろ』
「分からなくていいんだよ。見ない方が幸せな時もあるんだからさ」
両目を塞いでいる銀時の手を剥ぎ取ろうとしたがビクともしない。何かを見せないようにしているのは分かるが、今は近藤と王女を無事に部屋に連れていかなくてはならないのだ。
『遊びに来てるんじゃないんだよ』
「ペット連れて仕事してるって?」
『それは……』
見合いをしていると言ったら確実に近藤は笑われる。自分のことじゃないから別にどうでもいいのだが、近藤が望んで見合いを受けたわけではないので、笑われるのは少し可哀想かと口を噤んだ。
「なんでもいいけどよ。ゴリラのことより……その、お前次いつうち来るの?」
『次?』
「そ。あー……ほら、新八と神楽がうるせぇんだよ。海が来ない来ないって」
そういえば最後に万事屋に行ったのはいつだったか。副長補佐になってから土方や近藤に振り回されることが多くなった。それどころか松平に呼ばれて将軍の話し相手にされることも多々ある。
補佐についたというだけでこんなにも使いっ走りにされるとは思っていなかった。
『最近忙しくて行ってなかったな』
「外でも見かけねぇからよ。忙しいのはわかるけど……ちゃんと休んでるのか?」
『ある程度は』
「お前は集中すると飯食うのも寝るのも忘れるから心配なんだよ」
『今は口うるさいのがそばに居るから大丈夫だろ』
二時間おきに部屋に見に来るやつが居るから問題ないと言えば、銀時は弟をアラームみたいに使うなと呆れた顔で笑う。
『時間が出来たらそっち行くわ』
「おう。待ってる」
『で?この手はいつ離してくれるんだ?』
「あ、忘れてた」
両目を塞いでいた手が外される。一番に目に映ったのは池の中に沈んでいくゴリラ王女の姿。
『何があったんだ……』
「ゴリラがゴリラをぶん投げた。あのゴリラ漏らしたみたいよ」
『どっちのゴリラだよ』
聞かなくても分かってしまうのがなんとも悲しい。近藤の足元にコロコロ転がっている茶色い物体から目を逸らしながらそっとため息を漏らした。
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