第58幕
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翌日、松平に呼び出されてとある料亭へと来ていた。二日酔いで痛む頭を手で押さえながら近藤と松平の後ろをのんびりと歩く。
「どうした?頭でも痛いのか?」
『すみません。昨日ちょっと飲みすぎたみたいで』
「珍しいじゃねぇか。お前が飲むなんて」
『たまになら飲むんですけどね』
「それなら今度付き合え。良い酒教えてやる」
ニカッと笑う松平に苦笑いを浮かべつつ近藤の方を見やる。先程から心ここに在らずな状態で近藤は松平の後ろを歩いていた。
『近藤さん、大丈夫?』
「ああ……大丈夫だ……」
昨日、土方から報告を受けてから近藤は上の空だ。いつもならうるさいくらいなのに。
『初めてのお見合いなら緊張しても仕方ないか』
上の人間と会うのとはまた違った緊張感があるのだろう。いつもそれくらいしおらしくしてくれていたらこっちは大助かりなのだが。
「いや、なんか今呼ばれた気がして……」
「緊張してるじゃねェか。まぁムリもねぇか。見合いなんて初めてだもんなぁ」
『気楽にいけばいいと思うよ。俺も昨日初めてホステス行ったけど、なんとかやり過ごせたから』
「え、まさか海行ったの!?トシたちについて行ったの!?」
「どうだったァ。海ィ……初めてのホステスは」
『よく覚えてないです。久しぶりに酒飲んだせいで頭も痛いですし』
ホステスでの記憶はそんなに残ってない。帰り際になんか面倒事を起こしたような気がするが多分気のせいだろう。
「そうかァ。次は俺が連れてってやる。良い娘紹介してやらァ」
「ちょ、とっつぁん!海に変なこと教えないでぇぇぇぇ!!この純粋な眼差しを汚さないでええええええ!!!」
近藤の叫びが頭に響いて痛みが増す。眉間にシワを寄せながら近藤の背を軽く叩いて静かにして欲しいと声をかけた。
『初めてのお見合いでテンション上がるのはわかるけどちょっと落ち着いてくれないか?そんなんじゃ相手の女性もびっくりするだろ』
「いや、女性というよりゴリラだろ!あれは完璧ゴリラだろ!!!」
「近藤、写真はゴリラっぽく映ってるかもしれねぇがよ、実際はもっと可愛いかもしれねぇだろ?ちょっとかしこまってゴリラっぽくなっちゃっただけだなぁ、これ」
「なっ……かしこまってゴリラってなに!?」
『緊張しちゃったんだろ。仕方ない。今の近藤さんも緊張しててゴリラに見えるし』
「海くん!?俺、今ゴリラに見えてるの!?」
あんぐりと口を開けて驚く近藤を海は目をゴシゴシと擦ってから再度見直す。頭から爪先まで見て一言。
『……うん』
「間が空いたよね!?今、間が空いたよねえええ!?」
「いい加減腹決めろよ近藤。ぶっちゃけこの縁談は政略結婚を狙ってる。猩猩星と地球は外交で衝突ばかりを繰り返している。この事態を収拾するためにお前が選ばれたのよ。目には目を、ゴリラにはゴリラをだ!」
『(結局ゴリラなんだよなぁ)』
ゴリラじゃないゴリラじゃないと言ってきたが、どう見たって相手の写真はゴリラだ。天人とはいえゴリラと結婚させられる近藤。そしてこれからはそのゴリラを局長の嫁として慕っていかなくてはいけないということ。
なんとも微妙な気分だ。そんなことを感じつつお見合い相手が待つ部屋の前へときた。
「いいか、近藤。王女を落とせよ」
「そんなこと言われてもよ……」
『近藤さんなら大丈夫だって。気に入ってもらえるさ』
「ゴリラに気に入られても嬉しくないんだけど」
松平が一声掛けてから障子を開ける。少しずつ見えてきたお見合い相手は海たちが思っていた想像の三倍ほど大きいゴリラだった。
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